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井上尚弥興行で“現役医師ボクサー”も激闘 夜勤あり、精神科と両立だから知る「人の心の弱さ」――岐阜ヨコゼキ・名和祐輔

名和(左)は34歳で大舞台のオープニングカードを飾った【写真:徳原隆元】
名和(左)は34歳で大舞台のオープニングカードを飾った【写真:徳原隆元】

ボクシングをやっていなかったら「気に留めていなかったかも…」

 名和は大学の医学部時代にボクシングを始めた。世の中が新型コロナ禍で不安定な時期。「エクササイズがてらに」と手を伸ばしたのがきっかけだった。漫画「はじめの一歩」を読んでいたことも後押しになった。2023年にプロデビュー後、3連敗を喫したが、24年8月に初勝利を収めた。

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 一時は外科医を目指していたことがあった。しかし、手を怪我するわけにいかないことや、急変対応で駆けつける必要があることなどから、仕事のオンオフがはっきりしている精神科の道を選んだ。9時~18時までの勤務後に2~3時間のトレーニング。週に1度の夜勤業務があっても、ジムに通うサイクルを続けた。「ボクシングに対して理解がある職場。非常に配慮していただいて、すごく感謝しています」と口にした。

 ボクシングを通して精神的にも、肉体的にも自分を追い込んできた。限界に近づくたびに、人の心の弱さをより感じ取れるようになった。「もしこのスポーツをやっていなかったら、そういう人の気持ちを気に留めていなかったかもしれません」。ボクサーとしての鍛錬が患者と向き合う視点や受け止め方にも良い影響を与えている。

 広大なアリーナにまばゆいスポットライト。味わったことのない環境に緊張もしたが、この場に立てる喜びを全身で噛みしめた。

「一生にあるかないかの大舞台。この5分間が自分にとって一生の宝物になっていくと思います」。拳を交える時も、患者と向き合う時も。この経験が深く胸に刻まれた。

(THE ANSWER編集部・澤田 直人 / Naoto Sawada)

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