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「選ばれた者だけの舞台」にしない 大学スポーツに一石を投じる「関西・中部対抗戦」の試み

層の厚い関東に対抗、地位格差の課題にも取り組む

 まず、大会の決勝進出枠は各地域の支部ごとに4人まで、1大学あたり2人までに制限。各大学の出場上限を2人に設定することで、一部の強豪校に選手が偏ることを防ぎ、複数の大学から幅広い選手が決勝に進出できる構造を生んだ。

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 次に、B決勝にも得点が加算され、チーム全員が勝負に関われる仕組みを採用。B決勝とは、1位から8位のA決勝に届かなかった選手たちが出場できる、9位から16位を決めるレースのこと。このB決勝にも得点が付与されることで、たとえ表彰台に届かなくても、チームの得点に貢献できる仕組みだ。

 さらに予選の最終組では“逆順方式”を採用し、速い組から泳ぐという緊張感のある演出も導入された。

 また、パーソナルベストを出した選手には、電光掲示板に「PB」と表示される演出も。たとえメダルに届かなくても、自分自身を超えたという証が“見える形”で称えられることは、特に下位層の選手たちにとって大きなモチベーションになったに違いない。

 そして今大会の開催は、もう一つの課題――地域格差にも向き合う取り組みでもあった。

 関東には有力校が密集し、自然と高い競争が生まれる土壌がある。一方、関西・中部は、地理的な距離や人数の面から“層の薄さ”という課題を抱えていた。

 この格差は競技力だけでなく、選手のモチベーションや経験値、さらには進路の選択肢にまで影響を及ぼしてしまう。「層の厚い関東に対抗しうる、刺激的な環境を自分たちの手でつくる」。その想いが、今大会の背景には込められていた。

 だからこそ、このように地域を越えて対抗し合い、つながり合えるこの舞台の意義は大きい。 私自身も大会を観戦し、大学の垣根を越えてハイタッチを交わす姿や、一生懸命泳ぐ選手たちの姿に、正直なところ羨ましさを覚えた。私が在学していた頃にはなかった取り組みが、今、確かに“大学スポーツの未来”として形になっている。

 支部対抗という形式で、本気で戦い、応援し合い、支え合ったこの経験は、選手たちにとって忘れられない“青春の1ページ”となるだろう。そしてきっと、社会に出た後も静かに背中を押してくれる思い出になる。「また、あの時みたいに頑張ってみよう」―― そう思える記憶は、人生のなかで何度でも立ち返ることのできる、確かな支えになるはずだ。

「選手たちに、より多くの経験を」―― その想いが結集した今回の挑戦。きっと次の世代の選手たちにとって、新たな挑戦の扉を開く契機となっていくだろう。

(竹村 幸 / Miyuki Takemura)

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