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井上大仁の凄さを知っているか 「記録より世界」を公言する男の“負けてきた強さ”

課題を洗い直して「世界」を意識のスタンダートに置き、練習量も増やしてきた【写真:荒川祐史】
課題を洗い直して「世界」を意識のスタンダートに置き、練習量も増やしてきた【写真:荒川祐史】

箱根と世界、競技人生で受けた2つの衝撃「何もかもが違うと思った」

 山梨学院大1年生で出場した箱根駅伝1区を任されたが、区間10位。「自分以上の力は出た。それでも付いて行けなくて……。すべてが衝撃だった」と振り返る。以来、4年連続出場。最後の箱根では3区で区間3位に食い込んだが、下級生時代からエース級として活躍していた設楽、大迫とは対照的だった。

 社会人となって、屈辱も味わった。24歳で掴んだ17年世界陸上の代表切符。ロンドンで行われた頂上決戦で、悔しさを味わうことになる。26位の惨敗。「自分の想像以上の世界を見て、何もかもが違うと思った」と再び衝撃を受けた。3人出場した日本人選手でも最下位。しかし、井上の「打たれ強さ、負けん気」が発揮されるのは、こういう時だ。

「問題は、どこを基準にして勝負しているか、だった。当時、自分は国内レベルしか見てなくて、それで勝負できると思っていた。でも、真の一流選手は世界のトップで勝負するのが当たり前。そういうギャップがすごく出た自分の力の弱さに一回は落胆したけど、それが分かれば、また頑張ろうという気持ちになれた」

 なぜ、結果を出せなかったのか。課題を洗い直して「世界」を意識のスタンダートに置き、練習量も増やした。そして、半年後、昨年2月の東京マラソンで当時日本歴代4位となる2時間6分54秒をマーク。アジア大会代表に選出され、快挙に結実した。大学1年生で学生レベルに歯が立たなかった男が一躍、日本のトップランナーに上り詰めた。

 しかし、“勝てるランナー”になってなお、この男に満足は存在しない。「レースで勝っても、喜びはその場だけ。レースに出ていなかっただけで、自分より強い人はたくさんいる。まだまだ自分の力は伸び続けていけると信じているので、それが現状に満足せずにやれている要因かなと思う」と、事もなげに言う。

 東京五輪レースにして見れば、序盤で出遅れながら、一人、また一人と背中を追い抜き、気付けば先頭集団に取りついた。35キロからいよいよトラックが見えてくる2019年。井上には“負けてきた強さ”がある。

「僕は勝ったことの方が少ない競技人生。そういう人たちを超えて今があると思っている。実際、マラソンをやるたびに強くなっている実感はある。日本記録に関わらず、その先を目指していかないと世界と戦えない。記録にこだわるより世界と勝負できることを考えてやっている」

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