井上尚弥インタビューvol.3 父の流儀が最強の礎「手を上げられたこと一度もない」
今や世界のボクシングファン、メディアからも熱い視線を浴びる、WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)。衝撃的なKO勝利を重ねてデビューからの連勝を17(15KO)にまで伸ばし、“モンスター”の愛称はすっかり定着した。伝統ある米専門誌「リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)でもトップ5入りを果たすなど、世界的な評価を確固たるものとしている。
モンスター独占インタビュー第3弾、父・真吾さんに見る井上家の子育て論
今や世界のボクシングファン、メディアからも熱い視線を浴びる、WBA世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)。衝撃的なKO勝利を重ねてデビューからの連勝を17(15KO)にまで伸ばし、“モンスター”の愛称はすっかり定着した。伝統ある米専門誌「リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)でもトップ5入りを果たすなど、世界的な評価を確固たるものとしている。
【第1回】井上尚弥インタビューvol.1 強さの秘密は達人級の集中力「人は3分間集中できない」
【第2回】井上尚弥インタビューvol.2 BOX界の“変化”を歓迎「誰が強いかわかりやすくなった」
【第4回】井上尚弥インタビューvol.4 2019年に描く野望「3団体統一、その先の景色を見たい」
2018年はその名をさらに高めた。5月にジェイミー・マクドネル(英国)を初回KOで下して3階級制覇を成し遂げ、バンタム級の3団体の王者が集結した10月開幕のトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)初戦ではまたしても圧巻の70秒KO勝ち。ボクシング界を震撼させたモンスターに「THE ANSWER」では単独インタビューを行い、強さの秘密に迫った。4回に渡ってお届けする。
第3弾は井上家の子育て論について。いかにして“モンスター”の礎は築かれたのか。トレーナーを務める父・真吾さんへの思いを語り、ジュニア時代を振り返った。
◇ ◇ ◇
――井上選手が子どものころの話も聞かせてください。よくトップ選手はジュニア期から練習ノートをつけている、という話を聞きますが、井上選手はどうだったのでしょうか。
「父からはノートをつけろと言われて、つけた時期も少しありましたけど、いまはつけていません。自分はつけない派ですね。意味合いがいま一つ分からなかったですし、感覚でやっている部分が大きいので」
――中学生で全国大会優勝とか、高校生でインターハイ優勝とか、何歳でプロデビューとか、年代に合わせてゴール設定はしましたか?
「全然ないですね。それでいったら、自分が思い描いていたプロ生活だと、まだチャンピオンになってないです。世界タイトルマッチまでに20戦ぐらいキャリア積もうと思っていたので」
――想像よりも随分、早送りですね。
「今の自分は想像できてなかったです」
――小学生のときに世界チャンピオンになりたいとは思わなかったのですか?
「小学生のときはインターハイチャンピオンになりたいと思ってましたけど、世界チャンピオンは雲の上の存在みたいな感じだったので」
――意外な印象を受けます。
「自分がやっていたときと今とではキッズの層も違いますし、自分のころは大きな目標とかはなく、のほほんとやってたんですよ(笑)。そもそも練習環境が、小さいジムで父、弟の拓真(昨年末にWBCバンタム級暫定王座獲得)、従弟の浩樹(日本スーパーライト級1位)という狭い世界で、当時はキッズの試合もあまりなかったので、周りのレベルも、自分たちが強いのか弱いのかもよく分からなかったですから。高校に入ってインターハイで優勝して、ようやくレベルが分かったようなものです」
――逆にそういう環境だったのが良かったという思いはあるでしょうか。
「そうかもしれません。いまの小中学生にアドバイスするなら、楽しくやることがまずは一番ですね。だって続かなかったら意味がないですから。小学生なんて中学に行ったら生活も変わるし、友達も変わるし、そこでボクシングに打ち込める楽しさがないと続かないですよね。特にボクシングはチームメートと支え合ってというスポーツじゃないですから。自分の場合は弟と浩樹がいたというのは良かったですね。だから肉体的にきついことはあっても、ボクシングが嫌になるというのはなく、楽しくやってこられました」