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エディージャパン熟成を加速させる2人 「まさに日本の9番に相応しい」23歳と25歳、若きHBコンビの奮闘を検証

素早い球出しを続けた藤原忍【写真:(C)JRFU】
素早い球出しを続けた藤原忍【写真:(C)JRFU】

指揮官も称賛「まさに日本の9番に相応しい、正当派の日本のSHだ」

 チーム始動から、エディーは各ポジションで様々な選手を投入して、経験値を上げるのと同時に個々のポテンシャルを試し、競り合わせてきた。そんな中で2試合連続で先発、同じHBコンビで戦えたのは、同じSHの齋藤直人の選択が結果的にプラスに働いている。昨秋のW杯も経験している齋藤は、エディーも「一番手の9番」と公言する存在だが、今季フランスの名門スタッド・トゥールーザンと契約。エディーも新チームでの研鑽を重視して8月から代表を離れたことで、残された藤原、小山大輝(埼玉WK)の出場機会が増えたのだ。

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 エディーが「小山はとてもいいフィニッシャー。防御も得意だし、キックゲーム、そしてゲームをオーガナイズする能力も長けている」と、小山を控えメンバーから試合を締めくくるフィニッシャーとして高い評価をしていることもあり、藤原にはさらに先発出場のチャンスが高まっている。

 アメリカ戦で素早い仕掛けと密集からの好判断のキックを見せた藤原は、自分自身のパフォーマンスをこう振り返る。

「エディーさんと『行けるという判断であれば自信を持って行け』と話していました。他の選手もそれを分かっていたし、僕が行くと決めたら皆も行くと決まっていた。チャンスがあれば行きましたし、(相手防御が)セットしていたらキックと考えていた。アウトサイドバックスから言われる(指示の声がかかる)こともありました」

 初陣だったイングランド戦などでは、どんな状況でも遮二無二パス、ランと速いアタックを意識し続けていた藤原だが、試合を重ね、相棒の李とのコミュニケーションを重ねながら、プレーの緩急や状況判断をより意識しながらプレーできているのが窺われる。

 エディーが評価するもう1人のSH福田健太(東京サントリーサンゴリアス)は怪我のリハビリ中だが、指揮官は今週に入って飯沼蓮(浦安D-Rocks)を追加招聘。藤原にとってはさらなるチャレンジが課せられたが、スピードを重視した国内ラグビーの中でもパス捌き、ランと速さを強みにする藤原がどこまで持ち味を輝かせるかは、オールブラックスら強豪との対戦が待つ秋のテストシリーズへ向けても代表強化の注目ポイントになる。

 試合後の会見で、エディーに「今日の藤原のプレーぶりは、(大会冠スポンサーの)アサヒスーパードライを飲ませてあげるくらいの評価か」と聞くと、苦笑混じりにこう返してきた。

「まだ奢るまでじゃないね。でも、藤原はいい方向に進んでいます。まさに日本の9番に相応しいというか、アタックが強みのトラディショナルで正統派の日本のSHだと思っています」

 そう指摘したが、藤原も試合後に「今日も味方が1人しかいないのに焦ってパスをしてしまったり、気持ちを落ち着かせるところは落ち着かないと、僕が急いだら皆にも感じてしまう。ここはしっかりオーガナイズしていかないといけない。ゴール前ディフェンスとかもちょっと課題ですね」と自ら課題を指摘している。自分自身の個人プレー、スキル面では輝きを見せる一方で、密集周辺の選手をどうコントロールするかという、パス以外のSHとしての役割には進化の余地がある。

 代表チームでは試合前日のジャージープレゼンテーションという行事がある。日本代表にゆかりの深い人物や過去に代表で活躍した元選手が、出場メンバーにジャージーを手渡し、激励のメッセージを語るのだが、アメリカ戦前夜は元代表SHの堀越正己・立正大監督が招かれた。

 堀越氏は、160cmを下回るサイズながら日本でも卓越した素早いパスワークとキック処理などの判断力で、歴代最高クラスのSHとして活躍したレジェンド。現役を引退した1999年生まれの藤原にとっては、その存在すらほとんど知らなかったというが、プレゼンテーション後のやり取りを「9番はFWと一緒のように戦わないとチームは負けるといわれて、実際そうだなと感じました」と振り返っている。試合前日の“金言”をゲームに生かすのは容易ではないが、この日の藤原がみせた積極的で速い球捌き、密集への素早い動きは、堀越氏の後を追う者としての可能性を滲ませていた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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