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「ピチピチの10代には負けへんで」 体操ニッポンで稀有な存在、24歳・杉原愛子に宿る覚悟と信念

全日本個人総合選手権、床運動で演技する杉原【写真:中戸川知世】
全日本個人総合選手権、床運動で演技する杉原【写真:中戸川知世】

「WBCは凄かった。バスケやバレーも感動した。でも、体操も素晴らしい」

 だからこそ、杉原の「メジャーに」が響いた。東京五輪後「一区切り」として競技を離れた。子どもたちへの指導や大会のレポーター、各地での演技披露や講習会など体操に違った面から関わった。性的画像問題にも正面から取り組み、自らレオタードをデザインするなどユニホームの選択肢を広げる取り組みもした。体操の未来を模索しながら幅広く活動。「普及に関しては選手の時から関心があった」とも明かした。

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「WBCはすごかったですよね。バスケットボールやバレーボールも感動しました。でも、体操も素晴らしい。だから、もっともっと知ってほしい。同じ採点競技のフィギュアスケートのようになったらいいなと思います」と話す。他にもメジャーにする方法はあっただろうが「まだできると思ったし、周囲も後押ししてくれた。自分が実際に演技して、魅力を発信することが一番なので」。昨年6月の種目別選手権で大会に復帰。いきなり床運動で優勝してみせた。

「プロ」としてパリ五輪を目指すことを決めたのは昨年11月。練習環境を整えるために立ち上げたクラウドファンディングでは、多くのファンの支援を得た。目標額を上回る500万円超が集まり、米国合宿も実現させた。「たくさんの人の支えに感謝したい」。これも最近、各競技の選手がよくする発言。少し「流行り言葉」のようにも聞こえるが、杉原の言葉には重みがあった。「女子体操選手のロールモデルになりたいんです」。強い覚悟と信念を感じた。

 リオ五輪前年の15年、NHK杯で初優勝し、日本代表としてシニア大会にデビューしたアジア選手権(広島)で個人と団体の2冠を手にした時は高校1年生だった。跳躍力を武器に高難度のひねり技を連発し、大勢の報道陣に戸惑っていた15歳は、表現力を武器に正確さと美しさで高得点をマークし、自らの意思をストレートに発信する24歳に変わった。その成長ぶりに驚き、感動を伝えると、「泣いてくださ~い」と言ってニッコリ。そんな茶目っ気は、変わっていなかった。

 日本女子体操史上3人目の3大会連続出場を決めるためには、5月のNHK杯との合計得点で上位4人に入る必要がある(他にチーム貢献度で1人選出)。5位につけている杉原は「4位に入っていないことが悔しいし、うれしい。自分は最強や、と思って1か月練習したい」と言い切った。華やかで美しい体操の魅力を多くの人に伝え、体操を「メジャーに」することを目指して、杉原の挑戦は続く。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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