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「年俸はいくらなんだ?」 欧州での失意を経た日本復帰、李忠成が再会した恩師にかけられた言葉

ザッケローニ監督からW杯メンバー発表前日にかかってきた電話

 2014年ブラジルW杯の日本代表メンバー発表の前日には、監督のアルベルト・ザッケローニから電話があった。

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「選びたかったけれど、今回はそれができなかった。今まで本当にありがとう」

 ありがたい電話だったが、反面W杯が消えたという現実は重かった。

「ザック監督は(吉田)麻也がいたこともあり、わざわざサウサンプトンまで来てくれて『試合に出ろよ』と激励してくれていましたからね。僕も『この人を男にしたい』と思って頑張ってきました。ただワールドカップという目標がなくなると心に大きな穴が開いて、モチベーションを保ち難くなりパフォーマンスを上げるのが凄く難しくなりました。今でも欧州から戻ってくる選手がいると、出て行く時の3割増しくらいの期待がかかる傾向があると思うんですけど、これは本当に難しいんです。だからファンの方々にも、復帰組を温かく見守って欲しいと思います」

 サウサンプトンとの契約を終え、日本での復帰を考えた時に、真っ先に思いついたのはミシャの愛称で親しまれるミハイロ・ペトロヴィッチのことだった。

「広島に移籍した当初は、あまり好きになれなかった。でも試合に使われるようになってからは僕の見方も変わって最後はパパのような存在になり、彼には恩しかなかった」

 李は日本に戻ると、早速ミシャと連絡を取り自宅を訪問して再会を果たした。

「ミシャ、また一緒にサッカーをやりましょう。僕を獲ってください」
「オレは今、浦和レッズにいるんだけど、年俸はいくらなんだ?」

 最初から呆気ないほどに腹を割った話が進んだ。こうして李は、サウサンプトン時代に続き、赤いシャツに袖を通すことになる。

 しかし待ち受けていたのは、必ずしも歓迎だけではなかった。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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李 忠成

サッカー元日本代表 
1985年12月19日生まれ、東京都出身。在日韓国人4世として生まれ、父の影響を受けて4歳でサッカーを始める。FC東京U-18から2004年にトップ昇格。翌年に柏へ完全移籍すると、3年目の07年2月に日本国籍を取得した。同年のJ1リーグで30試合10得点、U-22日本代表に選出され、翌08年に北京五輪に出場した。09年夏にサンフレッチェ広島へ完全移籍。10年のリーグ終盤戦で12試合11得点とゴールを量産すると、11年1月のアジアカップ日本代表に選出され、オーストラリアとの決勝で伝説のボレーシュートを決めて優勝に導いた。12年1月にサウサンプトンへ移籍。負傷の影響もあり13年限りで欧州挑戦に終止符を打つと、14年からは浦和レッズで5シーズンにわたってプレーし、17年のAFCチャンピオンズリーグなどのタイトル獲得に貢献した。横浜F・マリノス、京都サンガF.C.を経て22年からアルビレックス新潟シンガポールに在籍。今年9月14日に今季限りでの現役引退を発表した。
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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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