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天才少女が“姿を消した”2年間 クライミング19歳・森秋彩、「伸び悩んだ」後に取り戻した原点

日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は8月にスイスのベルンで行われたスポーツクライミングの世界選手権女子複合で銅メダルを獲得し、2024年パリ五輪出場を決めた森秋彩だ。天才少女と呼ばれたクライマーが、ついに辿り着いた五輪の舞台。「伸び悩んだ」時期と、原点を取り戻し克服した現在について語った。(取材・文=松原 孝臣)

小学生時代から天才少女として注目を集めた森秋彩。20歳で迎える来夏パリ五輪に挑む【写真:積紫乃】
小学生時代から天才少女として注目を集めた森秋彩。20歳で迎える来夏パリ五輪に挑む【写真:積紫乃】

連載「10代逸材のトリセツ」、森秋彩(スポーツクライミング)前編

 日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は8月にスイスのベルンで行われたスポーツクライミングの世界選手権女子複合で銅メダルを獲得し、2024年パリ五輪出場を決めた森秋彩だ。天才少女と呼ばれたクライマーが、ついに辿り着いた五輪の舞台。「伸び悩んだ」時期と、原点を取り戻し克服した現在について語った。(取材・文=松原 孝臣)

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 手元に、金色と銅色と、2つのメダルが並んでいる。

「触ってもらって大丈夫ですよ」

 その言葉に手にしてみると、思っていたよりも重みがある。そしてそのメダルは、物理的な重み以上の価値を持つメダルでもあった。

 8月1日から12日にかけて、スポーツクライミングの世界選手権がスイス・ベルンで行われた。森秋彩は、この大会のリードで優勝。リードで世界一になったのは男女を通じて日本初、世界選手権での優勝は日本女子初という快挙であった。

 さらにボルダーとリードによる複合で3位となった。複合は五輪の実施種目であるが、この成績をもって規定をクリアし、森はパリ五輪日本代表の切符をいち早く手にしたのである。

 しかも複合のメダルは、はたから見れば危機的な状況の中で得たものだった。当日は朝から発熱や腹痛に苦しみ、開始直前まで寝ていても回復にはほど遠い状況であったのだ。

 いざ迎えた試合で、前半のボルダーは6位。リードではトップホールドの一歩手前まで登らなければ表彰台に届かない状況に追い込まれたが、それを成し遂げたのである。

 この試合を森は振り返る。

「体調を崩してからは出られるだけで嬉しいみたいな感覚でした。今、この体でできる限りのことをやろうって振り切れて、逆に邪念が取れていいパフォーマンスができたんじゃないかなと思います」

「ボルダーはボルダー、リードはリードと切り離してポジティブに考えていました」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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