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ラグビー日本代表、W杯直前「1勝5敗」の現実 4年前から1試合平均「10.8得点」減少の要因は?

断片的にしか見えない「日本らしさ」

 世界のトップ8に食い込んだ4年前のW杯日本大会。日本代表の躍進の理由は、様々な視点から指摘されてきた。ベースとなったのは、半数以上を占めた外国人選手の存在と、彼らも含めたチーム全員が、対戦相手以上に1人ひとりの役割が明確に決められた緻密で組織化された戦術で、パワーや経験値では上の相手に対抗できたことだ。

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 背景には、日本代表級の選手で編成されたサンウルブズの南半球最強リーグ「スーパーラグビー(当時)」への参戦、そして“ウルフパック”と呼ばれた代表選手ベースのチームで国際試合を積めたことがある。代表の活動以外にも強化時間を作れたことが、ジャパンの進化を大きく後押しした。

 もちろん、世界トップクラスの選手、指導者の大量参入による国内リーグのレベルアップも追い風になった。日本選手の指示されたことを忠実に遂行する真面目さや、細かい技術、精度までこだわる国民性もプラス要素になっていた。

 W杯プレシーズンマッチとして今季国内で行われた5試合でも、試合を重ねるごとに速いテンポの攻撃や組織的に連動して防御を崩す「日本らしさ」は見えてはきたが、まだ断片的に“垣間見られる”レベルにとどまる。イタリア戦も、後半12分の17次攻撃からのトライなど「らしさ」が見えた局面はあったが、スコアが示す通り、ゲームを支配するまでには至ってない。言い換えれば、「らしさ」が点から線、そして面へと広がっていないのが現状だろう。

 日本が「らしさ」を継続できなかったのは、イタリアの防御も影響していた。指揮するのは、ニュージーランド代表“オールブラックス”の第1回W杯優勝メンバー、キアラン・クローリーHC。カナダ代表を指揮して日本と長らく激闘を繰り広げてきた指揮官は、連続攻撃からスピードアップする日本への対策として、ラックなど密集戦に人数をかけない防御を徹底してきた。そのため、日本が連続攻撃を仕掛けても、イタリアの防御がしっかりと壁を作りギャップを与えない。攻撃フェーズは増えても有効な防御突破にならず、あまり能動的ではないキックを選択するか、数フェーズ先にFL(フランカー)ミケーレ・ラマロ主将らの鋭いタックル、ジャッカルでテンポアップを阻まれ、攻撃を摘み取られるシーンが相次いだ。

 このような、密集に人数をかけずに防御ラインを張り続ける戦い方は、W杯本番の対戦相手も当然お手本にしてくるのは間違いない。そこを、どう崩していくかは、開幕までの2週間弱、そして開幕後も、重要かつ深刻なテーマになるだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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