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ラグビー日本代表は「もっと強かった」 敵将指摘の現在地、W杯で生命線となる異色の戦術とは

ロックの起用方法に見る日本代表の挑戦

 攻撃面でも前戦まで封印していた手の内を、ようやく垣間見せた。前半20分のファーストトライでは、敵陣左オープンでおとりのBK(バックス)が縦に走り込み、起点のパスを放ったSH(スクラムハーフ)齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)が移動しながら再度リターンボールを受けることで防御を内側に寄せてから、WTB(ウイング)セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)-ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)がロングパスで防御を振り切った。

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 後半13分のトライも、ラインアウトからFWだけでボールをBKへと展開して、SOの位置にSH齋藤が入ることで数的優位を作り、大外をWTBマシレワが駆け抜けた。どちらもアタック担当のトニー・ブラウン・アシスタントコーチらしい、工夫と小技が織り込まれた緻密なサインプレーだった。こんな相手防御を貶めるようなアタックは、本番用にさらに準備を進めているはずだ。

 そんな戦術と同時に、オールブラックスXV戦から始まった今季の代表戦を見て感じられる日本代表の挑戦が、LOの起用方法だ。身長201センチという破格のサイズを誇るワーナー・ディアンズ(BL東京)を除くと、日本代表はLOのエキスパート抜きでW杯での8強突破に挑もうとしている。

 この4試合で象徴的な存在になったのがLOアマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)だ。所属チームでは昨季のリーグワン全試合に先発したが、体が大きくタックルの強い選手が担うブラインドFL(フランカー)が10試合、NO8は6試合という選手が、代表ではLOを中心にプレーをしてきた。

 6月の代表始動からディアンズがコンディション調整中ということもありチャンスをもらっているが、ジャパンXVという名称で戦った7月8日のオールブラックスXV戦で“代表”デビュー(非代表戦)を果たすと、ここまでの4試合すべてで先発メンバー入り。本職がFLならではの運動量、スピードが代表チームではまり、トンガ戦でも仲間のキックをゴール前まで諦めずに追走、捕球してトライを奪うなど勝利に貢献した。

 では、そもそもLOにはどんなプレーが求められるのか。チームでも最も体が大きな選手が務めるポジションのため、「ロック」と書けば「岩」を思い浮かべるかも知れないが、英語表記は「Lock」。つまり鍵を意味している。スクラムに強固な鍵をかけるのが役割だ。相手とスクラムを直接組み合う第1列(PR=プロップ、HO=フッカー)を、真後ろでガッチリと束ねて押し込むのが仕事。そして現代ラグビーでは、スクラム以外のエリアで相手と体を張り合いボールを前へと運び、敵の前進を食い止める。密集戦でもモール、ラックに頭を突っ込み、密集を1歩でも前へと押し込むのが役割だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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