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国立大で「柔道が好き」と思えた 30歳角田夏実、パリ五輪内定に導いた出会いと“4kg減”の決断

寝技や関節技を得意とする角田。東京学芸大時代に独自のスタイルに磨きをかけた【写真:Getty Images】
寝技や関節技を得意とする角田。東京学芸大時代に独自のスタイルに磨きをかけた【写真:Getty Images】

自分で考えて練習した大学時代「柔道の面白みが出てきた」

 だが高校の顧問から反対され、東京学芸大学に進み柔道を続けた。同校は強化に取り組み始めていたとはいえ、柔道の強豪と言うには遠かった。

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「国立だからいいかな、という感じで。同級生に女子はいなかったです。練習をがんがんやらされる感じでもなくて」

 以前の取材では「雰囲気も緩い感じで」と当時を表している。しかし、その環境が転機となった。

「柔道を好きだな、と思えるようになりました。練習は自分で取り組むような雰囲気でしたが、射手矢(岬)先生に出会って、いろいろ考えて練習するようになりました。何よりも自分の特色というか、ちょっとずれているような柔道でも親身になって受け止めてくれました。どんどん面白みが出てきて、練習もしっかりできるようになりました」

 角田は立ち技というよりも、寝技や関節技を得意とする。日本では立ち技で一本を取ることを重視する傾向がある中では、異なる位置にいる。その修正を求められることはなかった。

 成績が出るようになると、卒業後も柔道を続けようと思った。社会人になって1年目は膝の手術がありブランクがあったが、2年目の2016年に開花する。講道館杯で優勝すると、グランドスラム東京でも優勝したのである。

 2017年には世界選手権代表にも初選出。初めて出場した大会で銀メダルを獲得する。その結果の受け止め方も、当時を象徴していた。

「世界選手権で銀を獲って、『どうしよう』という不安が強かったですね。そんなに強くないのに、見た目だけ強い選手に変わって。本当に講道館杯も勝てなかった選手だったのに、優勝してグランドスラムでも優勝、世界選手権。自分の実力がそこに追いついていない感じがしていたので、もっと大きな舞台を目指そうという思いもなくて、目の前のことをこなしていくのに精一杯でした」

 その中で、52キロ級を代表する1人と目されるようになっていったが、同級には角田が銀メダルを得た世界選手権で金メダルを獲得、つまり決勝で角田を敗った志々目愛(SBC湘南美容クリニック)、さらには阿部詩も台頭していた。

「そこで一緒に戦う、一緒の土俵にいると見られるのが不安で、自分がそこに並んじゃいけないなって思ったり。どうにか並べるように頑張らなきゃなって思っていました」

 やがて東京五輪が近づいてきた。

「届きそうな位置にいると、やっぱり出たいという気持ちが強くなりました」

 三つ巴とも言える競争が続くなか、差をつけるような成績をあげられなかった。

 2018年12月のグランドスラム大阪決勝では3戦無敗だった阿部に敗れ、翌年の全日本選抜体重別選手権決勝で志々目を破り連覇したものの、世界選手権代表にはなれなかった。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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