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「早慶明だけがラグビーじゃない」 名将・春口廣、関東学院大を黄金期に導いた雑草魂と反骨心

雑草魂の原点は「コンプレックス」

 だが、春口監督は、その可能性に満ちた能力を見逃さず、さらに磨き上げた。選手の持ち味を前向きに評価するプラス思考の起用が、箕内以外にも多くの選手にチャンスを与えることで、雑草軍団を全国からエリート選手が集まる伝統校に渡り合う強豪校へと進化させた。

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「あの時代の選手たちは、鉢植えのお花じゃなくて、野原にそのまま生えていたような子だった。だから、自分で自然の中から水も補給していたんだ。そういう子たちが多かった。それでチームの土台ができていったのかな」

 選手自身の強い生命力も評価する春口監督だが、雑草魂の原点はコンプレックスだという。春口監督自身、全国区では無名の愛知高から、当時はエリート揃いの日本体育大に進学。その日体大も、ライバルだった伝統校の早慶明に挑み続けるチームだった。常に持ち続けた反骨心、対抗心は、指導者になってからも貫いてきた。

「意地だね。もともとコンプレックスの持ち主だったから、やっぱり自分をアピールしたい、こんなチビでもラグビーできるぞという気持ちだったんだ。早慶明だけがラグビーじゃないぞ、伝統作ってやろうじゃないかという気持ちだね。勝って勝って、伝統を作っていく。負けたら踏み潰されちゃうからと、いつも必死だったよ」

 そんな思いを、教え子たちにも求め、叩き込んだことが、関東学院大の成功に繋がっている。

「部員たちには、お前たちからラグビーを取ったら何が残るのかと問いかけてきたんだ。練習がきつくても、ラグビーができるということが幸せなんだぜ、とね。ここに何しに来たのか、ラグビーするためだろ、早稲田に勝つために来たんだろと言い聞かせた。コンプレックスというのは、逆に憧れなんだよね。俺が学生時代も早稲田は憧れのチームだった。だから倒したかったし、常に上を目指すことができたんだね。学生たちにも、煙草やめろ、酒やめろ、遊ぶな、関東学院に入れたんだからラグビーで恩返ししようよと話してきた。それをみんなが理解してやってくれたから、ああいう時代を築けたと思う」

 対外的なマインドセットだけではなく、栄養補給などチーム内の環境を整え、部内で競い合う姿勢も植えつけることができたからこそ、200人という大所帯でも質を落とさずに強化を続けることができたという。

「強くなるには一に練習だし、練習するためには食事が大事だと選手には話してきた。食べて、練習して体を鍛える。そうしたら休養も大事になる。栄養、運動、休養の3つのバランスを理解していた選手が力をつけていった。スポーツや部活では、よく何かを犠牲にしているというけれど、僕は学生に『何を犠牲にしてきたの?』と聞いてきた。遊ぶのを犠牲にしたのかな。でも、遊ぶことが本来の目的じゃないだろうとね。みんなの目的はなんだろう。強くなること、活躍して世に出ることを目指すなら、あんなたくさんの部員の中でも、まず目立つんだ、自分をどうやってアピールするのか、雑草でもきちんと花を咲かそうよと話してきたんだ」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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