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W杯決勝のPK戦4人目を蹴った舞台裏 12年経っても熊谷紗希に息づく「W杯を楽しまないと損」

胸に刻まれる大先輩の金言「楽しまないと損だよね」

「よく勝てたな、と思います」と振り返る決勝のアメリカ戦は、歴史に残る激闘だった。互いに譲らず延長戦を終えて2-2。勝負の行方はPK戦にもつれ込む。

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 佐々木則夫監督はチームで2番目に若い熊谷を5人目のキッカーに指名。当初、4人目に指名されていた澤穂希が自らの手で順番を後列に回したため、熊谷が4人目に繰り上がった。「蹴りたくないなんて言えない状況」で運命をかけた戦いに臨んだ。

 PK戦直前、宮間あやがキッカーたちの前で言葉を紡ぐ。大先輩の金言は、今も熊谷の胸に深く刻まれている。

「あやさんが『W杯の決勝でPKを蹴れる機会なんて、たぶんもう一生ないよ。楽しまないと損だよね』って。それが20歳の自分に刺さったというか、すごく心がラクになりました。とにかくシュートを置きにいくのだけはやめて、迷いなく思いきり蹴ろうと決めたんです」

 実は、決めれば勝利という状況を理解していなかった。両チームの成功と失敗の回数をしっかり数えて把握していたのに、である。平常心を保つことの難しさを物語るエピソードだ。

「アメリカのGKは経験豊富な選手で、少し前へ出るような素振りで駆け引きしてきました。目を合わせたら相手の雰囲気に呑まれてしまうような気がして、スタンドの方に視線を向けていました。自分が外してもまだリードしているということだけ理解していて、決めたらみんなが全力駆け寄ってきてくれて」

 右足から放たれたシュートはゴール左上へ突き刺さる。偉大な先輩たちに導かれ、猪突猛進で世界一のメンバー入りを果たした。

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