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「俺って人間は汚くて弱い」 希代のボクサー村田諒太、現役最後に残した哲学的人生観

引退会見で溢れそうな感情を堪えた村田【写真:荒川祐史】
引退会見で溢れそうな感情を堪えた村田【写真:荒川祐史】

ボクシング人生で気づいたこと「自分は思ったよりも強く、弱く、美しく、醜い」

 哲学書を好み、クレバーな思考を持つ希代のボクサー。コロナ禍で試合ができない期間は自問自答を繰り返した。「何を表現したくて生きてきたのか」。単に強さを、数億円のファイトマネーを、容姿のカッコよさを外に誇示したいわけではない。内面と向き合い、「自分自身に強さを証明したい」と強く欲した。

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 その中で、ボクシング人生を通じ、「気づいたこと」があるという。

「自分は思ったよりも強く、思ったよりも弱く、思ったよりも美しい部分もあり、思ったよりも醜い部分があった。自分自身というものに向き合わされた。そういうものを見せてもらう旅だったと思います。

 自分の求めていた強さにたどり着けたかというと、そうではない。けど、思ってもみなかったものが見えて、それは意外と悪くなかった。『あ、なんだ、俺って人としてこんなに汚くて弱いんだ』と思えた部分は、自分の想像より意外と悪いものではなかった。

 でも、『俺は弱いんだ。じゃあこのまま生きていいんだ』ではなく、それと葛藤していくことが生きていくことだと思う。ボクシングで見えたものは自分の弱さ、それを克服したいと思うちょっとした向上心。それをこれからもずっと引きずっていくのが人生だと思います。というふうに、今この時点では思っています。でも、明日になっていると違うかもしれないですよ」

 若い頃、目標計画を記す「人生ノート」をつくり、ラスベガスで10億円のビッグマッチを実現させることを夢に描いた。人生を豊かにするためにあったもの。しかし、今では「ああいったノートは必要ない」という。哲学者の言葉を借りながら人生観を明かした。

「人生は意味を求めるのではない。人生からの問いかけに答えていくことだと思います。これから人生が僕に何かを問いかけてくれたら、それに対して全力で答えていく。その結果としてそこに何かが表れるのかなと思います。目標の決め方、目標を達成することも大事だと思うけど、現実に37年間生きてきた中で考えると、良くも悪くも自分の思った通りにならない。

 だからこそ、今というのを大事にしてその瞬間、瞬間を積み重ねていった結果として何かが残ると思う。神様から与えられている一つひとつの試練に対して答えていく。その結果、何かが残る。その繰り返しだと思う」

 会見では南京都高の仲間や恩師たちからのビデオメッセージ。村田は感慨深そうな表情を見せ、感情を堪えた。歴代の担当記者も駆け付けた引退会見。ボクシングに何を与えてもらい、何を与えたのか。大きな功績がありながらも、答えは控えめだった。

「一番は出会いです。ボクシングを通していろんな方に出会って、恩師ができて、本当の仲間ができて、感謝する方々ができて、そういったものをボクシングを通していただけた。そう考えると、ボクシングは目的ではなく一つのツールだった。人生を充実させるため、自分が一生懸命頑張ることによって出会いをくれる一つのツールだったと思う。

 じゃあ僕はボクシングに対して何ができたのか。何もできていない気がします。物事って残らないですよね。次々に行くものだと思う。ただ、長い歴史のうちの一つとして何かの架け橋になって、もしかしたら『今』に対して少し繋ぐ要素にはなったのかなと思います」

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