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ラグビーW杯日本代表入りの争いは? リーグ序盤戦で見えたポジション別“最新勢力図”

競争が激しいSO、ベテラン田村優が円熟のプレーでアピール

 BKに目を転じると、司令塔のSO(スタンドオフ)がホットスポットになっている。昨季のテストマッチで起用された李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)、山沢拓也(埼玉WK)らに注目が集まるなかで、松田力也(同)が昨春の怪我からの完全復帰をアピールする一方、リーグ戦で視野の広さ、判断力で円熟さを印象づけるのは田村優(横浜キヤノンイーグルス)だ。

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 代表の肩書なしで迎えた今季リーグワン。開幕の神戸戦では、田村に代わり代表SOの座を射止めた李との直接対決となったが、開始4分に自陣での防御で相手の日本代表FB(フルバック)山中亮平を鋭い出足のタックルで仕留めると、8分には敵陣での左展開で、自ら防御を抜き去るトライも披露して、いきなり存在感を見せつけた。

 代表キャップ70と経験値は抜群だが、昨夏は代表予備軍のNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)に回され、秋は候補合宿止まりに終わった。課題は防御と勝負どころでのプレースキックの正確さだろう。今やテストマッチラグビーでは防御も重要な役割だ。田村は前述の山中へのタックルに加えて、後半6分にはニュージーランド代表でも縦への強烈な強さが武器の神戸CTB(センター)ナニ・ラウマペを低いタックルで止めると、直後には左サイド際に走り、トライを狙うWTB(ウィング)井関信介も仕留めた。

 持ち前の視野の広さを武器に、防御の空いたスペースへパス、キックを繰り出すゲームメークも健在だ。田村不在だった昨秋のテストマッチを振り返っても、キックボールからの攻防が多いなかで、他選手を動かす役割も含めたSOの判断力、ゲームメークはさらに重要さを増している。今秋のW杯で日本と対戦するアルゼンチンは24歳のサンティアゴ・カレーラス、イングランドも同い年のマーカス・スミスと、若き司令塔が急成長を続ける。日本代表も新しい力への期待は大きいが、コロナの影響も含めて李、山沢らに経験値を十分に積ませることができないなかで、ベテラン司令塔の天性の視野と経験値は侮れない。

 その一方で、代表ではSOでのプレーに専念した山沢だが、埼玉WKでのFB起用はインパクトを残した。WTB竹山晃暉が「ボールを持つと何かが起こる」と断言するように、深い位置から自由に動きながらパス、キック、ランとセオリーに囚われないアタックは対戦相手にとって脅威になるのは間違いない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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