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「カタールW杯を見た世代」が築く未来 “死の組”突破が日本サッカーに残した財産とは

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は記憶に残る試合が多かった、カタール・ワールドカップ(W杯)の熱狂が生み出しものについて考察。35歳になったリオネル・メッシは悲願のW杯トロフィーを母国アルゼンチンにもたらし、森保一監督が率いる日本代表はドイツ、スペインという列強を破って「死の組」を突破したが、そこで生まれた歓喜がそれぞれの国の育成年代に大きなインパクトを与えたことは確かだ。

カタール・ワールドカップに出場した日本代表【写真:ロイター】
カタール・ワールドカップに出場した日本代表【写真:ロイター】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:W杯の熱狂が子供たちに与えるもの

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は記憶に残る試合が多かった、カタール・ワールドカップ(W杯)の熱狂が生み出しものについて考察。35歳になったリオネル・メッシは悲願のW杯トロフィーを母国アルゼンチンにもたらし、森保一監督が率いる日本代表はドイツ、スペインという列強を破って「死の組」を突破したが、そこで生まれた歓喜がそれぞれの国の育成年代に大きなインパクトを与えたことは確かだ。

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 カタールW杯を現地で取材し、そこで感じた熱気は心を揺り動かすものがあった。

 とりわけ、優勝したアルゼンチン人サポーターが放つ熱量は巨大だったと言える。彼らはたいてい厚かましく、独善的で、しばしばルールも破った(例えば記者席に注意されても居座ろうとした)。しかし、彼らはそれだけアルゼンチンを、アルゼンチン代表チームを愛していた。純粋さ、奔放さ、その感情量の豊富さこそ、アルゼンチンを1つに束ねたのかもしれない。

 ピッチに立った選手たちも、その熱に応えるように全身全霊で戦い抜いた。イエローカードが飛び交い、ラフプレーは目に余り、勝者にふさわしくない言動もあった。しかし、彼らが命がけで闘争していたのは事実だ。

 リオネル・メッシがけん引したアルゼンチン代表は、順風満帆のスタートは切っていない。チーム戦術が上手く浸透せず、組織を作れず、初戦では格下サウジアラビアに一敗地にまみれた。第2戦のメキシコ戦も内容的にはボールを握られて主導権を奪われていた。しかしメッシの一発で勝利すると、ポーランドにも勝って、どうにか決勝トーナメントに進出。オーストラリアを2-1で下し、それぞれの波長が合ってきた。

 準々決勝ではオランダにPK戦の激闘の末に勝利したことで、吹っ切れたか。メッシが激高する姿は珍しかった。自分を可愛がった先輩であるフアン・ロマン・リケルメをFCバルセロナ時代に苦しめたオランダ代表監督、ルイ・ファン・ハールを挑発するポーズを取り、試合後に「どっか行け、間抜け」という強い言葉を使い、オランダ陣営を罵った。

 あるいは、その怒りを解放したことが、アルゼンチンに火をつけたのか。

 クロアチアとの準決勝、アルゼンチンは相手に的を絞らせない守りで、勝負どころでは火がついたように攻め込み、3-0で大勝している。団結した強さ。それは怒涛だった。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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