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年俸1億円超えも「珍しくない時代」 日本ラグビーで進む高騰化と“カテゴリA”の問題

カテゴリAは検討課題とリーグ側も認識

 では、このカテゴリ制度や年俸の高騰化について、リーグワン側はどのように考えているのだろうか。前編に続き、リーグ広報担当者に見解を聞いた。

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「年俸高騰化は我々も認めている。カテゴリAについても、少なくない数のチームからも意見や疑問を聞いていて、これからの検討課題だと考えています。サラリーキャップのような制度も、(前編で)説明したように、そのまま導入ではなくても問題意識を持ち、考えていく課題ではあります」

 このカテゴリ制度自体、リーグ発足の準備段階で、前身のトップリーグ時代にチーム側から受けた要望などを反映させて作られたものだが、1シーズンを終えてチームからは見直しや規定の変更などの意見が多い。リーグ側が説明するように、このような声を受けて規約の見直しを検討しようという段階まで来ている。契約の問題なので、来年からすぐというのは現実的ではないが、数シーズンという猶予時間を持たせながら改定される可能性がある。

 海外に目を転じて、日本より先を走る世界のプロリーグを見ると、イングランドのプレミアシップ・ラグビー、松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)らがプレーしたフランス・トップ14が、選手の質、契約にも直結する資本などで最高峰と考えられている。もちろん、南半球4か国で展開するスーパーラグビーも、資金力はヨーロッパに及ばないがプロリーグとして選手の移籍に伴う契約が頻繁に行われている。

 このような成熟したプロリーグで、チームと数多の交渉を続けてきたエージェントに対して、日本のチームがどこまで契約交渉で渡り合える人材を揃えることができるかは、チーム・企業によって差がある。様々な取材を通じて感じるのは、現状では売り手市場で移籍交渉が行われている印象だが、エージェントという立場の小林も疑問を持っている。

「たとえばニュージーランドのNPC(国内地域対抗選手権)は大会期間が3か月ほどで、多くの選手の報酬は300万、400万円じゃないでしょうか。ニュージーランドでは、資金的にはかなり厳しい状況です。そういう選手が日本に来た途端に、2000万円とかに跳ね上がる。その選手が本当にその金額に値するだろうかと思うこともあります。だから、しっかりした交渉が重要です。日本でラグビーチームを保有する企業は、どこも大きな会社ばかりです。だから社内には、このような交渉に長けた人材も必ずいると思うのですが、どうなんでしょう」

 小林が指摘するような社外との交渉で経験豊富な優れた人材は、名だたる一流会社ばかりのリーグワン参入企業には間違いなくいるだろう。だが今、企業内でラグビーチームが置かれた立ち位置を考えれば、大きな収益をもたらす事業ではなく、むしろ福利厚生や広告効果という名目で、数千万円から億を超える経費を使っている存在にすぎないのが現実だ。企業側に、交渉力に長けた能力のある人材をチームに活用する選択肢は少ないと考えるのが自然だろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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