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関西人の気質はアタッカー向き? スペインの育成が示唆する“サッカーと地域”の関係性

育成とは「川の流れのようなもの」

 アスレティック・ビルバオは今も伝統を継承し、ゴールマウスを守るスペイン代表の正GKウナイ・シモンを筆頭に、チェルシーに移籍したスペイン代表ケパ・アリサバラガ、レアル・ソシエダの正GKであるアレックス・レミロなど、同世代にスペイン代表クラスを3人も生み出している。おまけにU-21スペイン代表のGKにも、フレン・アギレサバラが名を連ねる。

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 もっとも、弊害もあった。戦術、技術が進歩を続けるなか、単純なフィジカル信仰は徐々に通用しなくなっていった。そこでスカウト時の体格の査定は取っ払っている。

 2010年代に入ってからは、小柄なドリブラー、スペイン代表イケル・ムニアインや同じく独創性を売りにしたMFアレックス・ベレンゲルを輩出している(レアル・ソシエダに至っては1980年代にバスク人選手純血主義を捨て、現在はダビド・シルバ、久保建英など小柄な選手の特性を取り入れることで飛躍)。

 とはいえ、大きく強く速い選手が出る傾向は消えない。なぜなら、バスクという土地柄がピッチでファイトする姿を求めるからだろう。クラブとしてのキャラクターは歴史の中で根付いたものだ。

「育成とは川の流れのようなもので、闇雲に加えるべきではない。結局、その地のサッカーの風土に落ち着くものさ」

 アスレティック・ビルバオの関係者が口にしていた言葉は啓示的だ。

 当然ながら、日本サッカー界も土地が求めるサッカーと密接に結びついている。例えば育成段階で、東京の選手と関西の選手は見事に対比的である。前者は真面目で、責任感が強く、後者はやんちゃで、失敗を怖がらない。

 前者は実直で、守備的な選手を生む傾向がある。橋本拳人、渡辺剛は象徴的だろう。神奈川にも広げたら、遠藤航、板倉滉、田中碧なども入る。後者は積極的で、才気煥発なアタッカーを多く生み出す。本田圭佑、家長昭博、香川真司、宇佐美貴史、乾貴士、柿谷曜一朗、南野拓実、鎌田大地、堂安律、食野亮太郎、中村仁郎など枚挙にいとまがない。

「関西の選手は、言われれば言われるほど“やり返す”文化があるというか。とにかく、やり返す精神が凄い(苦笑)。ガードが下がっているように見えて、次の瞬間、殴り返してくるようなところがあります。黙って撃たれ続ける、なんてことはない。絶対に撃ち返す」

 そう語っていたのは、ガンバ大阪のユースを率いる森下仁志監督である。森下監督自身、関西育ちでそのメンタリティを知り尽くしている。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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