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羽生結弦、後世に語り継がれる江陵の記憶 “完璧を超える”名演で達成した五輪連覇

負傷離脱したからこそ学んだ「作戦」

 そこで見せたのは、あらゆる心配を打ち消すかのような演技だった。

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 2月16日、まずショートプログラムを迎える。曲はショパンの『バラード1番』。冒頭は4回転サルコウ。完璧な着氷に、大きな歓声と拍手が起こる。

 その後の滑りもそうだ。ジャンプを含めすべての要素を完璧に滑る。いや、表現も含め、完璧という言葉では収まらない完成された演技がそこにあった。

 得点は111.68。首位に立つ。

 翌日のフリーは『SEIMEI』。

 冒頭はショートプログラムと同じ、4回転サルコウ。6分間練習では決め切れない場面もあったが、いざ演技の中では決めてみせた。

 その後の4回転トウループからの3連続ジャンプで転倒、3回転ルッツは着氷でこらえる体勢となった。フリーは4分30秒(当時)と、ショートプログラム以上に練習の段階から負担が大きい。やはりそこには、怪我の影響があったかもしれない。だが、そうした失敗は、プログラムの世界を損なわない。『SEIMEI』の、和太鼓のリズムと竜笛の織り成す調べに呼応し、重心の上下する足さばき、鋭い目線。曲調が優しさを帯びれば、柔らかな手づかいと仕草を見せる。陰と陽、その対極を表現するかのようであり、どの角度から観てもその所作は美しく感じられる。

 フリーの得点は206.17、総合得点は317.85。

「演技が終わった瞬間に勝てたと思いました。前回のソチオリンピックの時は、フリーが終わった後『勝てるかな?』という不安しかありませんでした。でも、今回は自分に勝てたと思いました」

 羽生は4回転ジャンプを、フリーでトウループ2本、サルコウ2本と計4本入れた。その構成は当日、決めたという。

「スケートができなかった期間があったからこそ、作戦というものを学ぶことができました」

 羽生は4回転ループや4回転ルッツに取り組んできた。だが、負傷から復帰したての状態だ。それを考え、また勝負をも考えた時、行き着いた構成だった。

 それは羽生の語るとおり、リンクから長期間離れざるを得なかった時間を活かしていたことを示していた。また難度の高いジャンプに取り組み続けてきたからこそ、ブランク明けにもかかわらず、4本入れることができたのではないか。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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