[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

勤勉な日本人が見誤る指導の本質 スペイン戦術家が重視する“理論より人間性”の意識

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は元ヴィッセル神戸監督のフアン・マヌエル・リージョの言葉から、「指導」の本質に注目。戦術家として知られるスペイン人監督だったが、最も大事にしていたのは理論やメソッドではなく、現場の「空気」だったという。

現在マンチェスター・シティでアシスタントコーチとして指導を行うフアン・マヌエル・リージョ(中央右)【写真:Getty Images】
現在マンチェスター・シティでアシスタントコーチとして指導を行うフアン・マヌエル・リージョ(中央右)【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:指導者の人間性が優秀な選手を育てる

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は元ヴィッセル神戸監督のフアン・マヌエル・リージョの言葉から、「指導」の本質に注目。戦術家として知られるスペイン人監督だったが、最も大事にしていたのは理論やメソッドではなく、現場の「空気」だったという。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

   ◇   ◇   ◇

 指導者はどのように「指導」と向き合うべきなのか?

 日本人指導者は勉強熱心で勤勉に思える。子供たちを意識し、とにかく新しいことを学ぶ意欲が強い。メソッドも好きだし、情報に対して基本的に敏感だ。

 しかし一方で、情報を取るために情報を得ようとしてしまう傾向もある。

「もっと新しいトレーニングが見られると思った」

 欧州や南米の指導者の現場などを見せてもらった日本人指導者が、しばしば口にする感想である。意外性のなさに落胆、物足りない様子だ。

 しかしメソッドはあくまで方法で、問題を解決するスイッチではない。行間を読むような行為が、指導の本質だ。

「上の空でいるような選手には、目を光らせないといけない」

 そう語ったのは、かつてJリーグのヴィッセル神戸を率い、現在はマンチェスター・シティでジョゼップ・グアルディオラ監督の参謀を務めるフアン・マヌエル・リージョである。

「クラブハウスに入る時の挨拶から、私は選手を試す。肩を強くつかんでみたり、わざと足を踏んでみたり、小突いてみたりする。そこでの反応で、彼らの気持ちを確かめる。気分が良さそうだとか、何か一人悩んでいることがあってイライラしているとか、練習に集中させるように持っていく。寝ぼけたままでは戦えないからだ」

 リージョは「戦術家」として知られる。グアルディオラが師事を受けたほどの人物で、理論派の印象が強いかもしれない。しかし、彼は「フォーメーションは数字の羅列」と断言し、「トレーニングはメソッドではなく、その質や強度ですべてが決まる」という思考の持ち主である。彼ほど現場の「空気」を大事にする指導者はいない。

1 2 3

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
スポーツ応援サイトGROWING by スポーツくじ(toto・BIG)
DAZN
Lemino
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集