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「才能」だけでは戦えない スペイン名門が重視、育成年代に求める“共闘精神”

育成部長が断言「サッカーを知るのに近道はない」

「我々の人材は限られています。精鋭集団になる必要があるでしょう。そこで大事なのはスカウティングです」

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 レアル・ソシエダの育成部長であるルキ・イリアルテはそう語っていた。本拠地であるギプスコア県は人口約71万人。小さくはないが、大都市ではない。フランス代表FWアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリード)のように県外でスカウトする例もあるが、多くは地元で提携した70ほどのクラブから有望な選手を引き入れ、その代わりに資金や医療や施設を提供している。

「育成に秘訣はありません。まずは人材を見極め、探り当てられるか。そしてスカウトした選手たちに要求し、日々対話を重ねる。まずは、指導者が自分の仕事に確信を持つことでしょう。当然ですが、コーチ自身がサッカーの仕組みを知っていることが欠かせませんね」

 選手と向き合う指導者が、サッカーを知る、ということを求められる。そのために対話は欠かせない。やりとりの中で、指導者同士が高め合うからだ。コミュニケーションができないと、指導者としては落第。現在トップチームを率いるイマノル・アルグアシル監督も、レアル・ソシエダのBチームで実績を残してきた1人だ。

「プレーにおいて何が必要か、我々はそれを問います。サッカーを知るのに近道はないですね」

 イリアルテ育成部長は言う。

「結局は日々のトレーニングの中で少しずつレベルを上げるしかありません。そこで、目立った選手が出てきます。例えば、速さが際立つようなら、その速さを使う術を心得ているか、さらに研ぎ澄ませることを我々は考えます。そうすることで1人の選手が殻を破り、全員のポテンシャルを上げるのです。もちろん、上手くいかない日が続くこともあります。それでも自分たちのやり方に自信を持ち、軽々しくスタンスを変えません。育成は晴れの日だけではなく、曇りの日も、雨の日も、嵐の日だってありますから」

 一貫しているのは、サッカー選手としての行動規範に対する指導の部分だ。

 レアル・ソシエダでは、「共闘精神」が重んじられている。サッカーは個人戦ではなく、集団戦である。勝負を制するには、仲間同士の信頼関係を構築できないと話にならない。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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