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松田直樹とフラット3 後ろから見た楢﨑正剛の証言「マツだけは練習しなくても守れた」

日韓W杯1次リーグ第2戦ロシア戦にスタメンした楢﨑氏(後列左から1人目)と松田さん(同5人目)【写真:Getty Images
日韓W杯1次リーグ第2戦ロシア戦にスタメンした楢﨑氏(後列左から1人目)と松田さん(同5人目)【写真:Getty Images

同学年だから見せた素顔「気分屋でとにかくワガママで大変」

 鮮明に覚えているのは、トルシエ監督が日本代表監督だった時代の練習です。当時はフラット3と呼ばれる戦術で、最終ラインの3人だけで5~6人の攻撃陣からゴールを守る練習をしていた。監督としては守り方や動き方、それと3人でも守れるという自信を植え付けようとしていたのでしょう。でもマツは練習しなくても自然体で守れてしまう。そういう選手はほかにいなかった。

 マツがいるところに不思議とボールが飛んでくる。優れたDFはたくさんいるけど、そういうタイプの選手は本当に珍しい。本能的な部分もあったと思うけど、マツはしっかり考えていたし、それを周りに伝えることも上手だった。そのセンスは簡単に真似できるものではなかったけど(笑)

 タイプとしては年下だけど闘莉王に似ていた気がします。似たようなスタイルで存在感があって。ただ、マツのほうがより賢いプレーヤーでした。守備側が不利な状況でもしっかり守れてしまうのは才能。だから雑誌などで個人的なベストイレブンを選ぶ企画がある時は必ず名前を挙げます。

 でも気分屋でとにかくワガママで大変だった。ものすごく印象に残っているのは、ジーコ監督時代の日本代表合宿中の出来事です。

 マツはメンバーに選ばれていたけど、レギュラーではなさそうな立ち位置。それを察知したのか、練習でやる気のない雰囲気をどんどん醸し出してきて。それで次の日の練習前に「オレ、途中で腰が痛くなるから」と怪我することを宣言したんです(笑)。また悪い冗談言っているよ、と。

 そうしたら、練習が始まってしばらくして本当に腰を押さえ始めて(苦笑)。それで代表チームを離脱して、合宿から帰ってしまった。まさか本当にやるとは思わなかった。後にも先にも初めてです、そんなヤツは。不満は溜め込まないタイプで、ずっとガキ大将です(笑)

 だから突然倒れたと聞いた時は本当にビックリしました。名古屋から松本に駆けつけたけど、何が起きているのか分からない。葬儀の時にようやく現実を受け入れて、ものすごく寂しい気持ちになりました。同じチームになったことがないのにプライベートでも付き合いのある選手はほとんどいないから。

 あれから10年が経ったけど、マツは年齢を重ねたとしても見た目が変わらなそうで、しゃべり口調もきっと同じ。はっきり言ってガキで、出会った頃からまったく変わらない(笑)。子供みたいでとにかく可愛いヤツ。でも、それがものすごく魅力的で周りの人を巻き込んでいく。

 亡くなったのにこうして話題になるのはマツが特別な存在だから。もしまた会えるなら、一緒に焼肉を食べて、酒でも飲みたい。お店も時間もマツに合わせますよ。自分のペースで生きるヤツだから(笑)。でも尊敬しています。

 その時は腰が痛くなって代表合宿から帰った話をツッコんでやろうかな。きっと「本当に痛かったんだよ」って堂々と言うでしょうね。それでこそ松田直樹です。

 名古屋グランパス クラブスペシャルフェロー

 楢﨑正剛

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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