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当たり前を壊してきた31歳寺田明日香 東京五輪を狙いながら次世代育成に懸けた理由

寺田明日香が「A-START」を現役選手で行う理由とは【写真:中戸川知世】
寺田明日香が「A-START」を現役選手で行う理由とは【写真:中戸川知世】

「A-START」を現役選手で行う理由「12秒8台で走れる私をリアルに感じてほしい」

 コンセプトは「挑戦する人の新しいキャリアスタートを応援する」。コロナ支援として3月に行った第1弾は支援者206人から集まった総額251万6000円を活用し、高校生・大学生を対象としたスプリントキャンプを沖縄で1週間開催した。

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「後輩の選手たちを皆さんで応援してもらいたいことが一番でした。私がポケットマネーでやるより、多くの方にファンになってもらい、選手のその先まで見てもらうことが、今後の陸上競技の発展に繋がっていくと思っているので」

 その“ガチ感”がスゴイ。希望者を書類選考で絞り込み、「チームあすか」のスペシャリストらによる5回のオンライン講義を実施。毎回、レポートを書いてもらう。「内容をしっかりインプットし、また自分の言葉でアウトプットできること」を軸に最終的に高校生9人、大学生8人を選んだ。

 現役選手の指導といえば、一日一緒に汗を流して体験をした“思い出作り”というスタンスも少ない。「本気の人に来てもらいたかった」と寺田。だから、自分も本気でぶつかり、ともに講座で学び、走り込んだ。引退後の方が負担は少ない、まして東京五輪を狙う立場にいたが、しかし――。

「見取り修行じゃないですが、トップの動きを見ることはかなり価値が高い。選手を辞めてからの私は『元陸上選手・寺田明日香』の動きになってしまう。12秒8台で走れる私は今しかいない。それをよりリアルに感じてほしい。現役だからこそやる価値が、見せる価値があります」

 コロナ禍に見舞われた今。「どんな苦境でも自分で考え、答えを導き出せる力を持ってほしい」と願いを込めた。結果、今季は多くの選手が自己ベストを更新していることに喜びを感じ、7月4日まで応援金募集をしている第2弾を含め、活動を継続していくつもりだ。(「あすかクラブ」公式サイト https://peraichi.com/landing_pages/view/terada1284

 寺田のもう一つ、特徴的な行動が社会にまつわる問題に声を上げてきたこと。

 これまでも結婚・出産の経験をもとに女性の社会進出など、様々なメッセージを発信してきた。最近、社会で広がる「ダイバーシティ」という言葉の解釈を聞いてみた。直訳すると「多様性」。寺田の解釈は「いろんな境遇を互いに認め合うこと」。自分の肩書きを引き合いに出して語る。

「私も『ママアスリート』と言われますが、それはママアスリートが稀有な存在だから。『パパアスリート』と言われないじゃないですか。だから、それも一つのダイバーシティの例なのかなと思っていて、その存在が当たり前になっていってくれればうれしいです」

 親として、娘のかかわりでも「ダイバーシティ」を日常的に考えている。「彼女はそこに関しては恵まれている」と寺田。ラグビー時代の仲間にはLGBTの友人や、脚が欠損している陸上のパラ選手らに触れる機会が多いが、果緒ちゃんの反応は自然体で変わらないという。

「私の女性の友人が彼女を連れてきても『仲良しでいいね~』みたいな反応。肌の色や言語も旅行や遠征で海外に連れていく中、なんで自分は日本語を喋り、この肌の色なのか、なんであの子は英語を喋り、肌が黒いのか、髪の毛がクルクルなのか。それを子どもなりに考えさせる。

 娘は幸い誰とでも友達になってくれる。やっぱり経験しないと人って怖がってしまう。うちは経験してもらい、本人が気づけないことがあったら、しっかりと説明をする。そんな風に子どものうちから他者を理解し、認め合える価値観が社会に広がっていくいいなと感じています」

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