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サラリーマンでプロ選手? アイスホッケー界の課題に挑戦する「横浜GRITS」の船出

新たな価値を示せるか、今季スローガン「ノーエクスキューズ」で挑む【写真:平野貴也】
新たな価値を示せるか、今季スローガン「ノーエクスキューズ」で挑む【写真:平野貴也】

浅沼監督「観て下さる方、選手が所属する会社の皆さんに共感いただける試合を」

 仙台出身で東日本大震災をきっかけに競技を一度辞めたが、トライアウトを経て東北フリーブレイズに入り、日本代表として戦った経歴を持つDF熊谷豪士(32歳)は、東北在籍時からオフシーズンには、親の知人が経営する東京の染色加工会社で働いており、横浜グリッツへの移籍でデュアルキャリアに移行した。近しい人物の会社で競技に専念できる環境だというが、それでも「宅建(宅地建物取引)の資格を取るように言われていて、その勉強はしています」(熊谷)と話したように、会社に在籍するだけで給料を得るという楽な話ではない。競技生活安定のための腰掛けではなく、ビジネスキャリアへの取り組みが自身の未来への投資と考えて取り組めるかどうか、選手の意識も試される。

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 選手は、両立の大変さを感じながら、次世代に新たな選択肢を作る熱意を持っている。しかし、寄せ集めの状態から始める新生チームで、デュアルキャリアという挑戦自体が初めての選手が多い。新たな挑戦が初めからすべてうまく運ぶのは、難しい。「NHLに最も近い日本人選手」の呼び声高い日本代表の平野裕志朗(25歳)が期限付きで加入したのは大きいが、世界最高峰のNHL(北米プロリーグ)でプレーした経験を持つマイク・ケネディヘッドコーチや、加入するはずの外国籍選手がコロナ禍の影響でビザ取得に時間がかかり、合流できていないといった問題も存在する。

 開幕に先立って行われたプレシーズンマッチでは、日光アイスバックスに2試合連続で2-6と連敗。古巣戦で悔しい思いをしたGK小野航平(32歳)は「強くなって、初めて、デュアルキャリアも一つの形として認められると思っています。新しいチームで予算が潤沢なわけでもなく、いきなり勝ちまくるのは正直、難しいかもしれないと思っています。でも、勝つんじゃないかという雰囲気は作れるものだし、そこ(勝負)にはこだわらないと、来年も、その次も(成功は)ない。プレシーズンマッチは、相当ふがいない。見ている人に対して、何が何でも爪痕を残すという気持ちを、僕自身も含めて表現できていなかったと思う。やってやるぞという雰囲気は、届くもの。届けられるチームにしたい」と熱っぽく語った。

 勝つことで、新たな挑戦の可能性や価値を認めてもらえるかどうか。浅沼芳征監督は「今季のスローガンは『ノーエクスキューズ(言い訳無用)』。勝利に向かっていくチャレンジャーとしてのハングリー精神を持った戦い方をしたい。チーム名にある『GRIT』は、やり抜く(困難に対する気概、闘志)という意味。観て下さる方、選手が所属する会社の皆さんに共感いただける試合をしたい」と1年目から存在感を示す気概を示した。10月10日、11日に釧路で行われる王子イーグルス戦が初陣。17、18日に新横浜で行うひがし北海道クレインズ戦がホーム初戦となる。新しい挑戦が、始まる。

(平野 貴也 / Takaya Hirano)

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