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ラグビー日本代表「具くん」の父 元韓国代表PRがHondaのコーチに必要なワケ

息子に日本代表への道を作った東春さんの思い

 本田技研鈴鹿でプレーしながら代表では日本の最強のライバルとして戦ってきた中で、母国代表チームのジャージーに縫い付けられたムクゲのエンブレムへの誇りは特別なはずだ。

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 にもかかわらず、息子には桜のジャージーを目指すことを命じたのが、いまの智元の活躍に繋がっている。客観的に考えれば、日本代表になれば母国の代表以上にさまざまな経験を得ることは間違いない。昨秋のW杯は、その最たる例だろう。しかし、日本と韓国の複雑な二国間の関係や歴史を考えれば、簡単な判断ではなかったはずだ。それでも東春さんは、息子にとって最良の選択肢を考えて、勇気ある決断をしたのだろう。この選択が日本と韓国のラグビーにとっても恩恵を残すであろう判断になった。

 過去の忌まわしい歴史は書き換えることはできないが、未来は自分たちで描くことができる。日本代表での智元くんのプレーを見る度に、そして父・東春さんの父親として、指導者としての選択を考える度に、このような思いが脳裏に浮かぶ。過去ではなく未来を見据えた上で、正しい判断ができる指導者をホンダは迎えることになるのだ。

 コーチというのは四輪馬車が語源であり、その役割は人を目的地に運ぶことだ。つまり、コーチの仕事は、選手をその目指す所に連れて行くことになる。

 東春さんは、愛息が目指す高みに辿り着けるためにニュージーランドへ留学させ、日本でのプレーを後押ししてきた。息子へ注いだものと全く同じ愛情をホンダのFWメンバーに注ぐのはできないかも知れない。だが、その愛情と情熱の何割かでも鈴鹿の後輩たちに注ぐことが出来れば、彼らが目指す高みに辿り着くための大きな後押しになるだろう。

 わずか6節で中止に追い込まれた今年のTLで、ホンダは2勝4敗の暫定10位に終わった。まだまだ若いチームだが、もしスクラムで上位とも互角に組み合えることができれば、10位から順位を上げるための大きな足掛かりになるのは間違いない。

 コロナ禍を乗り越えて迎える新シーズン。息子の活躍はもちろんだが、父が若いチームになにをもたらすのか。並み居る世界のレジェンドとともに、鈴鹿の新スクラムコーチの手腕にも注目したい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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