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東京五輪で金・銀メダル計4個獲得 世界最高の睡眠コーチ、海外で高まる休息の重要性

スポーツの国際舞台では「時差調整」が重要なテーマ

 リトルへイルズにとって成功への入り口となったマンチェスター・ユナイテッドでは、クラブハウス内のリカバリールームをプロデュースし、個別の対応を含めて休息の重要さを伝え習慣づけていった。指導するチームが外国へ遠征に出る際には、滞在先のホテルへ先回りしてベッドの弾力性などをチェックし、宿泊時の室内の温度設定なども指示している。

 またスポーツの国際舞台では時差調整が重要なテーマとなるが、2021年の東京五輪ではニュージーランドの女子ボートチームを指導し、全7種目で金、銀2つずつと見事な結果を導いた。矢野が解説する。

「世界記録が誕生するのは17~19時の間が最も多いと言われています。人間の深部体温が夕方にならないと十分に暖まらず、ピークに達しないからです。この深部体温のピークは、基本的に1日に1時間くらいしかずらせません」

 東京五輪では、独占放映権を持つ米国のNBCが中継を自国のプライムタイムに合わせようとしたために、ボートも含めて決勝の午前開催が大半を占めた。そして午前決勝でピークパフォーマンスを発揮させるための調整は、時差呆け解消のメカニズムと同じなのだという。

「時差呆けを解消するには、最低でも4日間はかかります。従って大舞台では、1週間くらい前に現地入りして、競技当日に最高の状態に持っていけるようにリズムを設計してあげるのが理想です。逆に予算的に余裕がなく、ギリギリのタイミングで入るしかない選手たちが結果を出すのは難しいですね」

 これまで矢野は、スポーツ分野では選手個別の指導経験しかなかった。だがリトルへイルズと独占契約を結んだのを機に、初めてチームの指導を引き受けることになった。兵庫県にある相生学院高校サッカー部で、通信制で全寮制という特性があり指導しやすい条件が整っていた。「睡眠環境を整えてあげることで、さらに効果が上がるのでは」と、新しい挑戦を楽しみにしている。

(第3回へ続く/文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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矢野達人

アスリートスリープコーチ(上級睡眠健康指導士) 
総合医療グループで病院や老人ホーム、スポーツジム等の運営に携わると、大阪で睡眠に特化したサロン「快眠ほぐしサロンすいみん」や「スリープクリニック」を運営。一般社団法人オルソスリープアカデミーの代表理事兼代表講師を務め、「アスリートスリープコーチ講座」や睡眠医療から生まれた究極の回復療法「メディカルスリープヘッド講座」を展開する。世界的スリープコーチであるニック・リトルヘイルズ氏と国内独占契約を結んでおり、今春から兵庫県相生学院高校サッカー部のスリープコーチに就任した。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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