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「寝る間も惜しんで頑張る」は美徳ではない 睡眠不足が選手の技能習得に及ぼす悪影響

後半の浅い眠りで「技能記憶が向上していく」

 翌日になると、なんとなくコツがつかめていて乗れるようになる。そういうケースが一般的なのだという。矢野がさらに解説を加える。

「後半の浅い眠りで必要な記憶が定着していきますが、技能記憶のほうは向上していくんです。だから深い睡眠ができていて成長ホルモンが分泌されているからいいと、3時間しか睡眠を取らず朝練習や夜遅くまでトレーニングを続けていると、フォーメーションプレーをまったく覚えられなかったり、視野が狭くなり正しい判断ができなかったりするなどの弊害が出てくる可能性があります」

 睡眠は時間ごとで、異なる役割を担っているそうである。

「前半の深い眠りの時は、成長ホルモンを分泌するだけではなく、嫌な記憶を消していきます。従って深い睡眠が取れていないと『明日も失敗したらどうしよう』と思い悩み、それで再び眠りも浅くなり、次の日も過緊張で失敗してトラウマになっていく。そんな悪循環にはまっていく危険性があります。もちろん、気持ちの切り替えが上手くできるかどうかは性格にも関わってきますが、深い眠りを確保して脳から嫌な記憶を切り離していく方法を教えてあげれば、選手たちの積極志向を引き出してあげられる可能性もあります」

 睡眠時間が少ない国民性は、スポーツ界にも多大な影響を及ぼしている。寝る間や休む間を削って頑張ることが、仕事の非効率化や重篤な病気に繋がることはすでに常識化されつつある。だがスポーツ界では、依然として「流した汗の量が結果と比例する」信奉が脈々と引き継がれている。

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矢野達人

アスリートスリープコーチ(上級睡眠健康指導士) 
総合医療グループで病院や老人ホーム、スポーツジム等の運営に携わると、大阪で睡眠に特化したサロン「快眠ほぐしサロンすいみん」や「スリープクリニック」を運営。一般社団法人オルソスリープアカデミーの代表理事兼代表講師を務め、「アスリートスリープコーチ講座」や睡眠医療から生まれた究極の回復療法「メディカルスリープヘッド講座」を展開する。世界的スリープコーチであるニック・リトルヘイルズ氏と国内独占契約を結んでおり、今春から兵庫県相生学院高校サッカー部のスリープコーチに就任した。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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