少しの失敗で殴られ鼻血止まらず「大人になり耳鼻科で骨折が…」 五輪を夢見た女性スイマー「怒ってはいけない大会」に託した願い
「少しでも油断したら、また殴られる」 大人になって知った事実
私が本格的に水泳を始めたのは、小学校低学年。私は比較的早い段階で、トップクラスのコーチに指導される機会を得た。
そのクラスは特に厳しく、少しの失敗でも怒鳴られ、時には殴られることもあった。鼻血が止まらない日もあり、「少しでも油断したら、また殴られる」――そんなプレッシャーの中で練習に通い、毎日プールに向かう時間になると自然に涙がこぼれた。
「期待されているからこそ怒られるんだ」と自分に言い聞かせ、状況を正当化しながら耐えたが、次第に自己肯定感や成長意欲が失われていった。不安ばかりが頭をよぎり、ポジティブなことを考えるより「自分には出来ないんじゃないか?」「水泳選手として向いていないんじゃないか?」と悪い考えが頭を巡るようになっていった。
大人になり、花粉症で耳鼻科にかかったときのことだった。医師から「鼻血が止まらなかったことはありませんでしたか?」と尋ねられた。
なぜ、そんなことを聞くのかと思っていたら、鼻を骨折した跡がある、という。その言葉で、私は初めて幼少期に殴られた時、鼻の骨が折れていたことを知ったのである。あの日の出来事が鮮明に蘇り、怪我の深刻さを大人になってようやく理解した。
怒られながら続けてきた水泳は、「やらされるもの」という意識として私の中に深く刻まれていた。それでも「五輪に出たい」という強い思いと、「今すぐにでも逃げ出したい」という気持ちの間で当時は葛藤していた。
試合に向かう前にも「怒られたらどうしよう」という気持ちが拭えないままレースに向かうこともあった。そんな思いが頭をよぎる自分は、「自分には競技は向いていないのではないか?」と悩んだことも少なくない。
揺れる気持ちの中で、私は何を得たのか。現役生活が終わるまで、私はその答えを問い続けていた気がする。