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箱根駅伝のスターから「走る」指導者へ 立教大・上野裕一郎監督、55年ぶり本戦への挑戦

高校時代の上野監督に刺さった恩師の言葉

 上野監督は高校時代、両角監督がグラウンドの草刈りをしたり、練習メニューを考え、大会への申し込みをしたり、バスを長時間運転したり、生徒の勧誘をするなど、選手が良い環境で練習できるように尽力する姿を見てきた。

「だから、ちゃんとやらないと両角先生は怒るんです。立教の選手も君のために、どれだけの人が動いているのかを理解して、陸上に取り組んでほしいということです」

 就任3、4年目になると、スポーツ推薦で入部してくる選手が増えた。だが、それでチーム全体の力や意識が急に高まるわけではない。例えば練習の取り組みにしても、誰も見ていないなかで、普段と同じように練習ができているかというと「怪しい」と上野監督は言う。

「スポーツ推薦の選手全員がすごく意識が高くて、順調に伸びていくわけではなく、1年生で強くなる選手もいれば、高校時代の自己ベストをなかなか更新できない選手もいます。怪我が増えて主力組に入れないと、なんのためにやっているんだろうと思う選手も出てきます。そこで、自分の将来を考えて、なんとなくやっておこうというのはもったいないと思うんですよ。諦めるのではなく、もっとやれると自分を信じて取り組んでほしいですね」

 20年前、両角監督の「人に見られていないところでも、見られているように頑張りなさい」という言葉は、当時の上野監督に刺さり、それから努力で道を切り拓いていった。そして、それは今の選手たちにも通じる普遍的な教えでもある。

【第2回】“日本一速い”上野裕一郎監督が並走 箱根駅伝を狙う立教大、選手の成長促す異色指導

【第3回】箱根駅伝“常連校”との差とは? 立教大の“現役ランナー”監督が抱く、個を伸ばす難しさ

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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上野 裕一郎

立教大学 陸上競技部 男子駅伝監督 
1985年生まれ、長野県出身。佐久長聖高校1年時から駅伝で区間賞を獲得するなど活躍し、1万メートルで日本高校記録を出した。中央大学でもスピードを武器に1年時から箱根駅伝など主要大会で数々の好成績を残した。エスビー食品へ進むと、2009年には5000メートルで世界陸上ベルリン大会に出場。13年からはDeNAに移籍し競技を続けていたなか、18年12月に立教大学陸上競技部の男子駅伝監督に就任。現役選手としての活動も継続する「ランナー兼指導者」として、チーム強化に努めている。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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