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「箱根駅伝にとらわれていた」 國學院大監督に“気づき”を与えた2人との出会い

選手自身に覚悟と責任を持たせる指導に転換

――最初は具体的に、どういうアプローチをしていくのでしょうか?

「まずは今の自分に何が足りないのか、自分を知るところからスタートします。その際、私の部屋に来てもらい話をします。そこで選手の課題を話し合い、それを解消するためにやり抜く覚悟があるのかどうかを見極めます。選手が自分で言ったことをやり抜くには、自分のことを知っていないと正しい選択ができないんです。誰かがそれをやっていたので、自分もやるという考えではなく、自分はこの状況だからこれをやるというのが正しい考え方だと思っているので。

 でも、学生は往々にして自分をなかなか理解できない。例えば、私以外から客観的な意見を聞いたり、それを受け止める素直さがなく、自分はこうだからと決めつけてやると失敗します。自分を知るというのはイコール人間性を磨くということでもあるんです」

 今の学生は、自分のやり方を選べないだけではなく、選択を他人任せにしてしまうことも多い。例えば指揮官が言ったことをやったが結果が出ないと、出なかった要因について考えるのではなく、『どうしたらいいんですか?』と答えを求めてくる。そうならないように前田監督は、こう選手に問いかける。

「まずは自分を知り、自分で選択してみようよ」

 選手に覚悟と責任を持たせないと逃げてしまう――。それが「弱いチームの典型」であると前田監督は見ているのだ。

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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前田康弘


 1978年生まれ、千葉県出身。駒澤大学時代に箱根駅伝を走り、4年時には主将として総合優勝を果たした。2007年に國學院大學陸上競技部コーチとなり、09年から監督に就任。着実にチーム強化を進めると、19年の出雲駅伝で初優勝。20年の箱根駅伝では総合3位の成績を収めた。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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