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日本人はコロナ禍をどう生きるべきか 名将エディー氏が説く「千と千尋の神隠し」の心

物理的な移動が制限される状況が推し進めたテクノロジーの進化

 明るい視点を持つことは難しいかもしれません。このパンデミック(世界的大流行)が今すぐ終わるわけではないし、飛び込んでくる様々な情報に振り回されてしまうこともあるでしょう。でも、この新しい環境の中で自分に何ができるのか、どうすれば心身ともに健やかに過ごせるかを考えてみませんか。息苦しさを感じているのは自分だけではありません。誰しもが難しさを感じる状況を逆手に取り、有効活用できる方法を考えてみましょう。

 どんな状況の中にもチャンスは隠されています。自分が成長できるチャンスはないか、家族のためにできることはないか、ビジネスに繋げるものを見つけられないか。どこかに隠されたチャンスを探す姿勢が大事。そして、その姿勢や物の見方は自分が生み出すものです。ただ、誰かにアドバイスを求めることを恐れてはいけません。自分には見えない道や方法が、他の人には見えることもあるからです。

 例えば、ウイルスの蔓延で人々は物理的に行動できる範囲が限られてしまいました。家族や友人に会えない状況をどうにか打破したいという思いに後押しされたのが、オンライン会議システムなどの普及です。オンラインミーティングが一般的になったことで、以前よりも世界がグッと近く感じられるようになりました。私はイギリスにいながらにして、日本やオーストラリアにいる人たちと同時にミーティングすることができる。これこそ、移動できないというマイナスの状況からチャンスを見出した好例で、この短期間にテクノロジーは大きな進化と普及を遂げました。

 イングランド代表HCという私の仕事も、パンデミックの影響を受けました。まず、渡航が制限されたため、他チームを視察したり、コーチたちと1か所に集まってチームの方向性を話し合ったりすることが不可能に。幸い、こういった問題はオンラインツールなどを利用することで、ある程度は解決できました。

 ですが、今年2月から行われたシックス・ネーションズ2021ほど、チームの指揮を執ることが難しかった大会はありませんでした。正直なところ、これまで重ねた私の指導者経験の中でも一番難しいものだったと言えるでしょう。

 そもそもラグビーはコンタクトスポーツです。さらに、練習や試合の中で仲間の背中を叩いて鼓舞したり、握手をして称えたり、自然なボディタッチを繰り返しながらチーム力を高めていくもの。合宿中や試合前のミーティングもチームビルディングには欠かせませんが、ロックダウン中のイギリスでは屋内の集まりに制限が設けられ、ソーシャルディスタンスを保つことは必須。そのためチームミーティングは氷点下の屋外で震えながらやらなければなりませんでした。チームとしての一体感を保ち、戦術を浸透させるのに思った以上の時間が必要でしたが、尻上がりに試合内容が良くなっていったことが、今後に向けての収穫です。

 今回のシックス・ネーションズは無観客で実施されたので、改めてファンの有り難みを感じる大会でもありました。選手はファンの声援があるからこそ、もう1段階ギアを上げられるもの。選手にとっては、ファンから与えられる力がどれほど偉大だったのかを知る、いい機会になったことでしょう。スタンドを埋めるファンの存在は、試合には欠かせません。

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エディー・ジョーンズ

THE ANSWERスペシャリスト ラグビー指導者

1960年1月30日生まれ。豪州出身。現役時代はフッカーを務め、ニューサウスウェールズ州代表。92年引退。教職を経て、96年に東海大コーチになり、指導者の道へ。スーパーラグビーのブランビーズなどを経て、01年豪州代表HC就任。03年W杯準優勝。イングランドのサラセンズ、日本のサントリーなどを経て、12年日本代表HC就任。15年W杯は「ブライトンの奇跡」と呼ばれる南アフリカ戦勝利を達成した。同年、イングランド代表HCに就任し、19年W杯は自身2度目の準優勝。近著に「プレッシャーの力」(ワニブックス)。

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