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“サッカーだけ上手い”からの脱却 欧州で進む「フィジカル・リテラシー」の重要性

英国の大学でサッカーを専攻した塚本修太が、心理学的なアプローチ(前回紹介)とともに重視しているのがフィジカル・リテラシーである。

クリスティアーノ・ロナウドは自らの身体能力を分析した上でプレーをしている【写真:Getty Images】
クリスティアーノ・ロナウドは自らの身体能力を分析した上でプレーをしている【写真:Getty Images】

【英国でサッカー学を修得した23歳の挑戦|第4回】自分の“身体の限界”を知る重要性

 英国の大学でサッカーを専攻した塚本修太が、心理学的なアプローチ(前回紹介)とともに重視しているのがフィジカル・リテラシーである。

「自分の身体をどう動かせるかを把握し、自在に動かす能力です。木登りをするとしたら、どこでどの枝に手を伸ばし、どんな身体の使い方をすれば成功するのかを適切に描ける。それがフィジカル・リテラシーです」

 塚本は自身を例に挙げて続けた。

「もともと僕は身体能力が高いほうだったと思います。しかし自分の身体の限界を知らず、無理をして怪我につながった。今の子供たちはインドア派が多いので、より重要性が高まっていると思います」

 ズラタン・イブラヒモビッチが想像を超えた方法で長い足を伸ばしてボールを収めてしまう。あるいは、クリスティアーノ・ロナウドが並外れた打点でヘディングをする。彼らは自分の身体の能力を知り尽くし、それに即した独特な選択をしている。

「オレならどうしたらあのボールに届く。彼らはそれを理解している。しかし他の選手たちが同じことをやろうとしたら、逆にバランスを崩して混乱に陥ってしまう」

 自分の身体を上手く使うためには、幼少時から様々な体験をさせる必要がある。だから欧州のアカデミーでは、積極的に他のスポーツにも取り組ませているという。

「パルクール(フランスの軍事訓練から発祥した競技。走る、飛ぶ、登るを基本として障害物を超えていく)を奨励するクラブが多いようです。ディナモ・ザグレブは定期的に異なる競技のコーチを呼んで実践させているそうですし、マンチェスター・ユナイテッドでもレスリングを導入したと聞きます。ウェイン・ルーニーは15歳までボクシングをしていたし、イブラヒモビッチもテコンドーの黒帯を持っています」

 塚本は英国でスカウティングの団体に所属し、5部リーグ以下でプレーする23歳以下の選手たちの評価を下す仕事をしたことがある。この団体が担当した選手の中には、レスターとの契約に漕ぎ着けたり、現在2部(チャンピオンシップ)でプレーしている選手もいる。

「イングランドでは、下部リーグほどプレーが激しくピッチも粗くなるので、フィットネスの良い選手が目立ちます。むしろフィジカル・リテラシーが良いかどうかが、上に行けるかどうかの分かれ目になっています。ジェイミー・ヴァーディが7部相当のリーグからイングランド代表まで上り詰めたのも、そこが頭抜けていたからです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近東京五輪からプラチナ世代まで約半世紀の歴史群像劇49編を収めた『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』(カンゼン)を上梓。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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