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全国大会で選手2割が出場ゼロ サッカーU-11リーグ創設者の危機感「こんなこと許されない」

クラブには「所属する全員を1人も不幸にすることなく、成長させる義務がある」

 一昨年のロシア・ワールドカップで、日本がベルギーに逆転負けを喫した翌日のことだ。FC市川GUNNERSに所属する6年生数人が幸野に話しかけてきた。日本のコーナーキックをベルギーのGKティボー・クルトワがキャッチして、MFケビン・デ・ブライネに渡すところから一気にカウンター攻撃が決まった。

「山口蛍の対応、あれはないよね」
「だったら、どうすれば良かった?」
「デ・ブライネがドリブルを始めた瞬間に、一度ペナルティーエリアまで引いて他の選手が戻るのを待てば良かったんだよ」
「そうだよな。でも山口もアドレナリンが出ているから、ついデ・ブライネに食いついてしまった。たぶん小学生の頃から、無意識レベルで対応できるようにトレーニングしてこなかったからじゃないかな。でも君たちは違う。大人になったら無意識レベルでもできるはずだよ」

 FC市川GUNNERSでは、小学生なら1チームの所属を8人制の倍に相当する16人までに止め、選手全員が全体の40%の試合に出場することを担保されている。また幸野が実行委員長を務めるプレミアリーグU-11も3ピリオド制を導入し、誰もが必ず1ピリオドはプレーする規則にしている。

「少年たちが一番望んでいるのは試合に出ることです。逆に彼らには毎週末、試合に出る権利があり、クラブ側にはチームに所属する全員を1人も不幸にすることなく、成長させる義務があるんです」

 幸野が持論を展開する。

「戦力が同じ2つのチームがあるとします。Aはレギュラーしか試合に出さない。Bは全員を出す。最初はAが圧勝します。でもBは上手くない子のモチベーションが上がるので、週3回の練習の中味が濃くなります。底上げが進むと、上手い子もなかなか相手を抜けなくなるので、さらに頑張り良い競争が生まれる。逆にAはレギュラーと、それ以外の子の差が広がる一方なので雰囲気も悪くなる。半年ほどでチーム力が逆転するのは当然です」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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