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「部活と恋愛」は本当にいけないのか 海外コーチは言う、「もっと恋愛をしろ」と―

恋愛に悩んだ高校時代に触れた海外コーチの考え「彼氏がいなかったら、誰が褒めてくれる?」

 恋愛も寛容されることで、伊藤さんは「本当はもっと能力が伸びるかもしれないとも思います」とも言う。今、そう思うのは、一人の大人として人生経験を積んできたからだけではない。自身も10代で「競技と恋愛」に悩んだことも、理由にある。

「中学生の時に周りは『彼氏が欲しい』と言い始め、みんな彼氏ができていました。私はできなかったのですが、高校生になると変わりました。私も『恋愛はするな、無駄だ』『男に費やしている時間はない』と言われ、『嫌だな。彼氏いちゃいけないんだ』と思っていました。でも、そう言われることで逆に競技に打ち込めない時期があった。彼に対して『付き合っちゃダメだって言われた。だから、別れよう』という話には、やっぱりならないですよね。先生も私の将来を考えて管理したかったと思う。だから、すごく大変でした」

 そんな時、自分を救ってくれた経験があった。

「海外のコーチは『どんどん恋愛しなさい』と言います。10代の頃、私もすごく言われたんです。意外と『やれ、やれ』と積極的に言われた方が自分で節制する部分もありますが、彼らが言うのは『恋愛しないとタイムも伸びないぞ』ということ。当時はなぜなのか分からなかったのですが、フランスやスペインのコーチは『恋愛の何がダメなの? やる気、出ないじゃないか』『彼氏がいなかったら、いい結果を出して誰が褒めてくれる? 褒めてくれる人がいるから、頑張れるんだろ』という感覚。日本では『ダメだ』『するな』と言われていたので、すごく新鮮だったし、救われました」

 海外において、交際相手は誰よりも自分を認め、尊重してくれる存在という認識。それをスポーツと線引きし、邪魔になるからと禁止する風潮はなかった。

 伊藤さんは「もちろん、文化の違いはあると思います」としながら、日本の教育について「言ってはいけないものはいけない、やってはいけないものはいけない、という(規則で縛る)教育。なぜ、言ってはいけない、やってはいけないのかという理由を子供にあまり考えさせることがない」と考える。

 そもそも、部活において恋愛を禁止する背景には、指導者が自分の管理外で競技に悪影響を及ぼす、不確定要素のリスクを減らしたいという思いがある。選手に結果を残してほしい親心の裏返しでもある。

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伊藤 華英

 日本代表選手として2012年ロンドン五輪まで日本競泳会に貢献。2004年アテネ五輪出場確実と騒がれたが、選考会で実力を発揮できず、出場を逃す。水泳が心底好きという気持ちと、五輪にどうしても行きたいという強い気持ちで、2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初めて五輪代表選手となる。

 その後、メダル獲得を目標にロンドン五輪を目指すが、怪我により2009年に背泳ぎから自由形に転向。自由形の日本代表選手として、世界選手権・アジア大会での数々のメダル獲得を経て、2012年ロンドン五輪・自由形の代表選手となる。2012年10月の岐阜国体を最後に現役引退。

 引退後、ピラティスの資格取得とともに、水泳とピラティスの素晴らしさを多くの人に伝えたいと活動中。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。

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