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高校サッカーの異端児が挑む「部活内リーグ」 理想は18チームでの競争、その狙いとは

選手の移籍期間も設定、公式戦には代表チームで参戦

 一方で少人数に絞った強化では、競争力とモチベーションの維持に限界があることに気づく。

 上船総監督には明治大学での指導経験がある。インディペンデントリーグに出場するBチームを任され、毎日のトレーニングには必ずゲーム形式を取り入れ、そこで活躍した選手たちが必ず週末の試合でプレーをした。チームは活気に満ちて、交代で出ていく選手がよくゴールを決めた。現在、鹿島アントラーズでプレーする常本佳吾なども、日々の練習でアピールして週末のスタメンを勝ち取り成長していった。

 だが、それは全員が同じBチームで平等の条件で競っていたからだった。いくらBチームで大活躍を見せても、Aチームへの昇格はハードルが高かった。相生学院でも、A、Bの序列を設けている以上、Bチームでなかなか試合に絡めない選手のモチベーションが低下していくのは必然だった。だから上船総監督は、少数精鋭から大人数での競争への転換に踏み切った。

 全員の所属するチームに序列はない。どのチームも週に1度の淡路プレミアリーグでの勝利を目指して、トレーニングを積み準備を重ねていく。対戦するのは、日常的に生活をともにする相手ばかりなので互いに長所も短所も知り尽くしている。それはプロの日常に似て、徹底して対策を練ってくる相手を凌駕する技量を見せられなければ上のカテゴリーでは通用しない。

 また、それぞれのチームが戦力を分析し、移籍期間を設けて必要な選手の補強や交換なども行っていこうとも考えている。一応9月には総決算の選手権へ向けて相生学院の代表選手を発表し、そこからはメンバーを固めて調整していく。つまり相生学院は、淡路島にミニ(疑似)国家を作り、Jリーグが日本代表の供給源になるのと同じ構図を実現しようと試みている。

 ただし構想はできても、肝になるのは選手たちの魂を入れる仕上げの部分になる。

「ここで公式戦と同じ緊張感、本気度を引き出せなければ絵に描いた餅になる」

 上船総監督は、そこにとことんこだわり、選手たちを鼓舞していった。

(第4回へ続く)

【第1回】少数精鋭でも“出番の少ない選手”は生まれる 異色の高校が大所帯の部活を目指す理由

【第2回】部活内で“ハイレベルな競争”を実現 異色の高校が創設した「淡路プレミアリーグ」とは

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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