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18歳北島康介が世界に食らいついた熱い夏 22年ぶり日本開催、世界水泳の記憶は今なお新鮮なまま

世界水泳に挑む後輩へ、北島氏が送る言葉【写真:荒川祐史】
世界水泳に挑む後輩へ、北島氏が送る言葉【写真:荒川祐史】

後輩たちへ「負けることを怖れないでほしい」

 キャリアを重ねていくと、浮き足立つこともなくなってくる。

 福岡から2年後の世界水泳(バルセロナ)では100メートル、200メートルともに当時の世界記録を出しての金メダルを獲得する。翌年のアテネ五輪に向けて周囲の期待が膨らんでいきながらも、プレッシャーを跳ね飛ばしてアテネでも100メートル、200メートルの2冠を達成。そして北京五輪でも同じく100メートル、200メートルを制した。ワクワクとドキドキを常にパワーに変換できているから「チョー気持ちいい」や「何も言えねえ」といった、観ている者の心をわし掴みにするワードも飛び出してくるのだと言える。

 水泳を純粋に楽しむという気持ち。ここが揺るがないから、成長もできるし、強くもなれる。もし結果が出なかったときに、自分を見失うこともない。

「確かに金メダルを取るのは大変。世界中の選手がそこに向かって狙っているわけですからね。でも一生懸命やってトライしてダメであっても、それが自分の誇りになる。競泳って競技の性質上、FUN(遊び)の要素が少ないと思うんです。どうしても忍耐、辛抱が必要だし、記録競技でもありますから。結果を残さなきゃいけないってイコールでつなげすぎると、どうしても自分がきつくなる。楽しむ姿勢は大切だと思うし、(後輩たちには)負けることを怖れないでほしいという想いがあります」

 北島氏は2016年に現役を引退後、東京都水泳協会会長、競泳プロチーム「東京フロッグキングス」GMなどを務め、大会委員長を務める東京都水泳協会主催の「KOSUKE KITAJIMA CUP」は今年1月ではや9回目を迎えるなど競技の普及、発展に尽力している。

 そして彼が銅メダルを取って以来、22年ぶりに世界水泳が福岡に戻ってくる(7月14日開幕、マリンメッセ福岡など)。世界水泳の魅力について、彼は普及の観点からこのように語る。

「日本のファンのみなさんに、もちろん日本の選手たちを応援してもらえればうれしいですけど、世界にはこういう選手がいるんだっていうことも知ってもらいたい。2001年の大会にはイアン・ソープ選手が活躍して、水泳界全体が盛り上がった感じもありましたから。せっかく福岡で開かれる大会なので一人でも多くの方に観ていただきたい。前回も観て、今回もっていう人だっているでしょう。僕も会場に行きますし、そういったファンの方と出会えることも楽しみにしています」

 水泳ニッポンの土台を揺るがないようにしていくには、もっともっと競技自体を盛り上げていく必要がある。今回の世界水泳福岡大会がその呼び水となることにも期待している。

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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