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一度は思った「男性に生まれていれば…」 女性騎手の先駆者として戦い続ける25歳の現在地――競馬・藤田菜七子

藤田は騎手としてハードな日々をこなしている【写真:Getty Images】
藤田は騎手としてハードな日々をこなしている【写真:Getty Images】

異性が少ない環境ゆえ、男性と会話をしているだけであらぬ噂も…

 競馬界には、女性騎手の活躍を後押しするための課題も残る。

 JRAには競馬場や調教拠点のトレーニングセンターに女性用のトイレやロッカーも整備されているが、女性騎手が所属していない地方の競馬場では騎手の調整ルームに女性用のトイレがなく、職員用のトイレを借りることもある。

 また、異性が少ない環境ゆえに、男性と親しく会話をしているだけであらぬ噂を立てられることもあるという。

 女性騎手は増えているというものの、いまだ男性に比べれば圧倒的に比率は低く、女性というだけで何かと注目されやすい。特に前編に記した通り、ビジュアルを取り上げてアイドル的、マスコット的に報じられる風潮も根強い。

 この課題について、藤田は「あくまで私の話ではなく、客観的に見て思うことですが」と断った上で、率直な想いを語る。

「やっぱり凄く難しいです。容姿などで注目されることは、それも一つの才能、個性というか……そういうものがあるので取り上げていただいていると思うので。取り上げられることは凄く良いことですが、それに見合った実績もつけていかないといけないと思います」

 一方で、藤田自身は「勝負の世界に男性も女性も関係ない」という持論を持っている。

 筋力面で劣ることは事実。しかし、身長が高い男性に比べて減量の負担がない分、食事面に制限が少なく筋トレも積める。アスリートとして、求めているのは“できない理由”ではなく“できる方法”。性別を言い訳にすることなく、自分にしかない武器を探し続けている。

「筋力では敵わない分、何でリカバリーができるか。騎手と馬は手綱で直接つながっているので、競馬で言う“当たりが柔らかい”という表現をするのですが、そういう意識は常に持っています。筋力面ではない何か、私の方ができることを探して戦うしかありません」

 体力面も実にハードだ。競馬のカレンダーは正月を除いて1年間びっしり。

 火曜から木曜はトレセンで、夏は午前5時という早朝から調教をこなし、金曜にレースに備えて競馬場の調整ルームに入る。公正な競走の観点から外部との接触はできず、携帯電話も持ち込めない。土日はレースがあり、地方競馬に遠征する際は平日も騎乗する。オフは月曜くらい。

 万全のコンディショニングでレースに騎乗するのは、フィジカルもメンタルも整える必要がある。「月曜は競馬のことを考えない時が多いですね。ゲームをしたり買い物をしたりして、競馬のことは火曜からしっかり考えています」とメリハリをつけ、ハードな稼業をこなしている。

 そして、キャリアを重ねるごとに競馬界の未来に目を向けることも増えた。

「日本では、馬ってなかなか身近な存在ではなく、人間と馬の距離がすごく遠い。もっともっと身近に感じてくれる人が増えれば、競馬に対して興味を持ってくれる人も自然と増えると思いますし、(動物としての魅力から)環境が変わっていってほしいですよね」

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