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みんなと違う肌の色・髪の質に悩んだ過去 救われた母の言葉、「違い」は悲しむのではなく喜ぶもの――バスケ・馬瓜エブリン「女性アスリートと多様性」

“他人と違うこと”に悩む子どもたちへ「逃げていい、逃げた足で仲間を見つけて」

 実感を込め、エブリンは言う。

「誰でも人と違う部分って絶対にある。でも、やっぱり誰かと同じが良くて、安心もする。自分もそうでした。日本人というアイデンティティは当時からあった。どうしても、私は人との違いが分かりやすいけど、それを自分の中でちゃんと受け入れたことで、変われたので」

 令和の世の中を見渡すと、彼女の言葉は深く響く。

 SNSを開けば「いいね」の数で、他人の評価が可視化される時代。「空気を読む」という言葉が浸透している日本。みんなと一緒であることにどこか安心し、敷かれたレールを歩むことで安定する。エブリンも小さい頃はその一人だった。

「今はむしろ、違うことがありがたい。こうやって人に見てもらいやすいし、ある種、今の時代は目立ってナンボのところでもある。母の言葉があったおかげで、凄く自分を表現できるようになったと思います」

 人と同じことで安心しながら、人と同じことに焦りもある。そんな矛盾が邪魔をして、チャレンジの第一歩を踏み出せない人は少なくない。それはアスリートに限らず、中高生だって社会人だって一緒だ。

「大事にするものは個々で変わるので、それがもったいないとは思わない。例えば、家族との時間、何もしない時間が大事だったり。敢えて言うなら、いろんなことに興味・関心を持つこと。嫌いなものがあったらやらなければいい話。そこだけ持っていれば、いずれ自分の中に火がつく瞬間は来ると思うので」

 ただ、かつての自分と同じように、まだ心が未成熟な子どもたちが“他人と違うこと”に悩んでいるなら、伝えたいことがある。「もし、今いる環境がつらかったり嫌だったりしたら、逃げていいとは思うんです」と語りかける。

「今はいろんなコミュニティがあって、SNSを通じて仲間のいる環境にだって行ける。もちろん、その場所に行くまでに孤独を感じることもある。別に今いる場所に無理にいなきゃいけない理由は何もない。逃げていいと思うし、何も悪いことじゃない。大切なのは逃げた足でそのまま仲間を見つけにいくこと。人から違うと指摘されて、自分が違うと気づいているところは『実は、強みなんだよ』と、気付けるかどうかも大きい。それが今、悩んでいる人たちにかけたい言葉です」

 人生は選択の連続だ。エブリンは2つの道に迷った時、どんな基準で道を選ぶのか。

「基本的には“難しいけど、楽しい方”をするかな。自分はあんまり続かないので(笑)。簡単だけど、楽しくなさそうだなと思ったらやらないし、難しすぎて、楽しさを感じられないなと思ったら、楽しく感じるレベルまで落とす。そういう選択の仕方でいいんじゃないかなと思います」

 人生は続く。そして、人生は長い。今後のキャリアの目標に「社会におけるアスリートの価値を上げていくこと」を掲げる。

「アスリートがどうやって世の中で貢献できる形を整えられるか。それが自分のミッションとしてやりたいこと」。アスリートを取材していると「アスリートの価値」を唱える選手は多い。しかし、世の中に影響を与える職業はある。タレントやアーティスト、芸術家もそう。

 では「アスリートにしかない価値」は何なのか。少しいじわるな質問にも即答が返ってきた。

「どの職業よりも、失敗がとにかく多くて。どの職業よりも、大人なんだけど大人げなくぶつかり合えること。それって多分ないと思うんですよね、他の職業では。そこにファンの方やスポンサーの方に夢を持ってもらえる。アスリートの持つ地道に失敗しながら立ち直る力は、多くの人に感動を届けられる理由になると思います」

 30分間のインタビュー。この言葉に象徴されるように、どれもエブリンらしい答えだった。

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