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「生理でお腹痛くても耐えて我慢するだけ」 急激に変わる環境…五輪選手も今はピルが「当たり前」の選択――女性アスリートと生理

伊藤さんが現役時代に後悔していることとは【写真:松橋晶子】
伊藤さんが現役時代に後悔していることとは【写真:松橋晶子】

五輪と生理が重なった伊藤さんが悔やんだこと

――最初からピルに関する知識は持っているわけではないと思います。どんなふうに知識を手に入れるのでしょうか?

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荒木「オリンピックの代表選手はナショナルトレーニングセンター(NTC=日本オリンピック委員会が運用するトップレベル競技者用トレーニング施設)でメディカルチェックの際に(婦人科の)専門家に相談する機会があり、『あなたにはこんな手段があるよ』とアドバイスを受けて薬を処方してもらえる。みんなそうしていますね」

伊藤「2013年頃からそれが主流になってますね。私は2012年に現役を引退したので、当時のNTCには婦人科の非常勤の担当もいなかった。今はもう常勤で先生がいらっしゃいますが、ピルは“知っている人が飲む”という時代。ほとんど、ピルの存在も知らなかった。たった10年ですが、トップアスリートの環境はだいぶ変わりました」

荒木「ドーピングの問題もありますね。私が受けていたホルモン治療も、ドーピング検査のために申請が必要になるし、すごく手間でした。それも、バレーボールは周りのスタッフにやってもらう環境があったから、なんとかなった。ピルは自分の体に合ったから続けられたけど、周りには合わなくてやめてしまう選手も意外といました」

伊藤「私がまさにそう。初めて出場した2008年の北京五輪が生理周期から計算すると、競技日程がちょうど重なることが分かって、ピルを服用したけど、体に合わなくて。副作用でニキビができて、体がむくんで3~4キロ太った。泳ぐと腹筋に力が入らず、おなかがポヨンとした感じで、タイムも0.3~0.4秒遅くなってしまって……」

荒木「そうだったんですね」

伊藤「もちろん、その中でベストを尽くして背泳ぎで100メートル8位、200メートルは準決勝敗退。ただ、後悔しているのは“ピルを飲んだこと”ではなく“五輪で初めて飲んだこと”。今になってみると、もっと前から飲んでおけば良かった。逆に肌が綺麗になって、体調が良くなる人もいる。試すエネルギーが必要だったと思います」

荒木「正直、選手も競技に一生懸命で、試すまでの余裕がないですよね」

伊藤「そうそう。いろんな人が『一度、試してみなさい』と言うし、理解はしているけど、トップ選手になればなるほど余裕がない。コンディショニングもいろんなルーティンができて、どんどん繊細になっていくから。なので、私の失敗した経験からすると、トップの手前のカテゴリーにいる若い選手は今のうちに試してほしいですね」

――伊藤さんが言うように、4年に一度の舞台だからこそ選手も生理に限らずコンディショニングには慎重になりますよね。

荒木「そうですね。だから、大会に重ならないように生理をずらすことも一つの手段。ただ、バレーボールは競技がリーグ戦から決勝まで2週間かかるので大変です」

伊藤「バレーボールはセット間も短いし、なかには試合中にトイレも行けない選手もいると聞きます。だから、生理中だと余計に大変でストレスですよね」

荒木「フルセットになると2時間半かかるので」

伊藤「私の場合は競技が1分で終わってしまうから(笑)。2時間半、誰かに見られながら集中し続けるのは凄いことだなって思います」

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