競技以外は「やったことないことに凄く臆病」 三屋裕子と考える女性アスリートの課題
競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員や一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「THE ANSWER」対談連載。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第3回のゲストは日本の中央競技団体唯一の女性会長である三屋裕子さん(日本バスケットボール協会会長)。バレーボールの選手引退後のキャリアやスポーツ界の女性リーダー育成について、お互いの考えを交わした。(取材・構成=長島 恭子)
連載第3回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×日本バスケ協会会長・三屋裕子」中編
競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員や一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「THE ANSWER」対談連載。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第3回のゲストは日本の中央競技団体唯一の女性会長である三屋裕子さん(日本バスケットボール協会会長)。バレーボールの選手引退後のキャリアやスポーツ界の女性リーダー育成について、お互いの考えを交わした。(取材・構成=長島 恭子)
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井本「2019年にスポーツ庁が策定したガバナンスコードにより、昨今、各競技団体は女性理事の登用に力を入れています。まだまだ目標数値(女性理事の40%以上の登用)には足りませんが、実際、人数は増えています。一方、理事選出のプロセスといった構造的な問題や人材不足の問題、あるいは理事就任後、どのように活躍していくかの道筋などは、まだ見えてきません。正直、現状は数合わせの段階と感じています。単刀直入に伺いますが、スポーツ界はどうして女性リーダーが少ないと考えますか?」
三屋「恐らく、原因は一つではありません。日本特有のジェンダー感といった社会的問題や女性特有のライフスタイルに関わる問題など、複合的にあります。しかし、これらの問題をゼロにすれば、女性リーダーになる人材が育つのかと言われると、それもわかりません。主観的に言うならば、私がなぜ今このポジションにいるのかというと、やはり『場』を与えてもらったからだと思います」
井本「恐らく、三屋さんも決して、最初からリーダーになろうと思われていなかったと思うのですが……」
三屋「全然、全然(思っていなかった)! 私は次女ですし、やっぱり姉さんの後ろについているのが心地よい。実は先頭に立って、ガリガリやりたいタイプではないんです」
井本「(他の業界も見渡すと)スポーツ界って、リーダーになりたい女性が比較的少ないと感じます。忙しいとか、ボランティアで無給だからとか、あとは男性ばかりで、憧れないポジションというのもあるかも知れません」
三屋「もちろん、断ることも選択の一つです。ただ、私は『自分にはムリ』という言葉を言われてしまうと、『あ、わかりました』とすぐに引き下がってしまう。自分にはムリだと思う人に、無理矢理にやっていただこうとは思わなくて。『できるかどうかはわかりませんが、やります!』と言ってくれるほうが遥かに『一緒に頑張りましょう!』と言えます。また、望む・望まないに関わらず、やれと言われ、やるべきと判断したのであれば、覚悟を持ってやっていく。逆に、覚悟がなく引き受けてはいけません。
井本さんもずっとスポーツをやってきたからお分かりになると思いますが、アスリートってできない自分を乗り越えて、できるようにしていくじゃないですか。競技を続けるうえで『どうせ私は(できない)』と思ったことはありますか? 『私なんか無理です』と思ったことはありますか? そんなアスリートはいませんよね。皆、根拠のない自信のなかでやっている。だから『できるかどうかわからないけれど、やります!』というのがアスリートの本質だと思うのですが……何だろう、競技以外ではやったことのないことに対して、ものすごく臆病ですよね」