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競技以外は「やったことないことに凄く臆病」 三屋裕子と考える女性アスリートの課題

アスリートも情報発信に使用するSNS、「セルフプロデュースをもう少し上手にすればよいのに」と話す三屋さん【写真:中戸川知世】
アスリートも情報発信に使用するSNS、「セルフプロデュースをもう少し上手にすればよいのに」と話す三屋さん【写真:中戸川知世】

女性アスリートは「純粋培養のように」育てられる日本スポーツ界の課題

井本「その通りだと思います。競技以外のことに対して、自信がない人は多いですよね。そこが一つ課題だと感じます」

三屋「ひと昔前まで、体育会という世界では皆、やっても、やってもダメ出しをされるなか、競技を続けていた。私の現役時代なんて、毎日毎日怒られるし、手も足も出る時代です。そんな中、自己肯定感を高く持つなんて絶対にムリ。今の子たちはちょっと違うかもしれませんが」

井本「そうなんですよね。できないと叱られるし、できても褒められない。だけど、引退後の人生のトランジションにおいて、自己肯定感が低いことは問題です」

三屋「ただ、アスリートはあまりにもファーストキャリア(スポーツ)が辛いので、『あれができたなら、これぐらいどうってことないだろう』とも思える。私もそれゆえに、苦しい局面も乗り切って来られたし、そのうち、『私、結構できるじゃん』となりました」

井本「はい、それは皆さん言いますね(笑)。私も引退した時、何もわからなくても自信だけはありました」

三屋「でしょう? であれば、やったことのない仕事のほうが、遥かに成果が挙がる気がしませんか? だって、水泳では溺れるかもしれないところまで追い込まれてやってきたんでしょう? それよりも辛いことや無理なことなんてないでしょう、と私は思うのだけれど」

井本「私もそう思っています(笑)。でも一般的に、女性に限らずアスリートの多くが、学業にきちんと取り組んでこなかったことなどが理由で、競技以外の社会一般に対して自信がなくて、それがセカンドキャリアを構築するうえでの課題にもつながっている気がします。三屋さんは今、後輩の女性アスリートを見て、どのようにキャリアを積み上げていくべきだと思いますか?」

三屋「例えばですが、元アスリートの子たちのSNSを見ると、セルフプロデュースをもう少し上手にすればよいのに、と思います。たまにはどこで食事をしたとか、洋服の話とか、プライベートのこともいいですが、それに終始するのも。せっかく、毎日チェックしてくれるたくさんのフォロワーがいるのにと残念な気持ちです。オピニオンリーダーになる条件を備え、発信するのに十分に値する場所があるのに、何を発信するのかというのを、きちんと考えてもらいたい」

井本「私もそれは感じますね。全部が悪いとは思いませんが、そればかり。どうして、そうなってしまうのだと思われますか?」

三屋「彼女たちはずーっと、世間から隔離された世界で『競技のことだけやっていなさい』と、純粋培養のように育ちます。また、今はだいぶ変わってきているとは思いますが、監督に言える言葉は『ハイ』と『いいえ』だけで、むしろ『考えるな』『言うことを聞いていればいい』と言い続けられて育ってきている選手は、まだ多いのかも知れない。そこが問題です。ここ10年ほどでスポーツコーチングもだいぶ変わり、隔世の感があるほど、『ちゃんと考えろ』と選手は言われるようになりましたけどね」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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