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女子バレー選手から日本バスケ会長に 我流の人生で三屋裕子も聞いた「女のくせに」の声

女性アスリートがリーダーシップを学ぶためのシステムの構築について語る【写真:中戸川知世】
女性アスリートがリーダーシップを学ぶためのシステムの構築について語る【写真:中戸川知世】

リーダーシップは「テクニックでも政治力でもない。最終的には人間力です」

井本「競技団体の女性理事の方々に話を伺うと、『自分には、これといったスキルや経験がない』と思っている人が多いように思います。リーダーに必要なことは何か、とは一概には言えないとは思いますが、女性アスリートがリーダーとしてスキルアップするには、どういったことに取り組めばよいのだろうと、悶々と考えています。例えば、リーダーシップ・スキルを習得するための、何らかのシステムは必要でしょうか?」

三屋「うーん、リーダーとしての勉強をし、スキルを習得すれば果たして、リーダーになれるのか? そこは難しいですね。リーダーはポジションですが、リーダーシップは人に由来します。ですから、リーダーシップの形もそれぞれです。ただ、具体的なプログラムでいうと、人にどういう言葉を掛けるかという知識や研修、カウンセリングだとかは必要です。

 私もスポーツコーチングやカウンセリングの勉強をたくさんしましたし、少しでもそこから、ヒントが欲しい時もありましたから。多種多様な人が集まる組織で、どういう言葉掛けをしたり、ルールを設けたりしたら、皆がベクトルを一緒にしてくれるのだろうか? それを考えるのが今のリーダーシップです。テクニックでもなければ、政治力でもない。最終的には人間力です。人はまず、心が動かないと、頭も足も動かさないですから」

井本「そういう意味では、三屋さんは心を動かせた。なぜかをご自身で分析すると?」

三屋「それが、先ほど言った、経験からのフィードバックです。私は選手を引退してから40年近く経ちますが、子どもから高校生、大学生まで指導をしたり、企業やNPO法人を作ったり、理事を務めたりといろんなことを経験してきました。それはもう、心折れることもいっぱいあったし、人がついてこられないようなことも、たくさん言ってきました。振り返ると、30代なんかは何でもかんでも、いけすかないヤツでしたね(笑)。それが40代で鼻をへし折られ、少し謙虚になりつつ50代を迎えた。今ではすっかり丸くなりました」

井本「鼻をへし折られたとは?」

三屋「自分が相手にしたことは返ってくる、という経験です。私も若さゆえ、経験不足ゆえにやってしまったことは山ほどあります。昔一緒に仕事をしていた方と時を経て再会したとき、自分のしたことを恥ずかしく思ったり、それが原因で少しずつ仕事が離れたりしていくこともありました。昔の教え子なんて、いまだに私が怖いみたいです。食事の場で『こっちにおいでよ』と言っても『イヤ、い、いいです……』と腰が引けている姿を見ると、あぁ私は、こういう風になってしまう教え方をしていたんだなと感じます。

 でも、それら全てが私であるので、恥ずかしいけれど、その過去をなかったことにはしません。スポーツと同じで、『経験』というフィードバックが自分のなかにいっぱいあると、次はどうすれば、過去よりもちょっとだけよくなるかを考えられる。私はいっぱいあるフィードバックを、フィードフォワードにつなげることができていると思います」

【中編】競技以外は「やったことないことに凄く臆病」 三屋裕子と考える女性アスリートの課題
【後編】スポーツ界の女性理事登用「たとえ数合わせでも」 日本バスケ協会会長・三屋裕子の信念

■三屋 裕子 / Yuko Mitsuya

 福井県出身。中学からバレーボールを始める。八王子実践高から筑波大に進学後、1981年、日立女子バレーボール部(当時)に入部。大学時代から女子日本代表の主軸として活躍し、1984年ロサンゼルス五輪では銅メダルを獲得。引退後、國學院高の教員を経て、学習院大助手、講師に。同大バレー部の指導をする傍ら、全日本ジュニアチームのコーチを務めた。1992年、筑波大大学院に進学。その後、筑波スポーツ科学研究所副所長に就任。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事(1998~2006年)、日本バレーボール協会理事(2007~2013年)を経て、2015年、日本バスケットボール協会副会長に就任。現在、日本バスケットボール協会会長、国際バスケットボール連盟理事を務める。また、2004年以降、上場企業・銀行等で社長、社外取締役を歴任する。

■井本 直歩子 / Naoko Imoto

 東京都出身。3歳から水泳を始める。近大附中2年時、1990年北京アジア大会に最年少で出場し、50m自由形で銅メダルを獲得。1994年広島アジア大会では同種目で優勝する。1996年、アトランタ五輪4×200mリレーで4位入賞。2000年シドニー五輪代表選考会で落選し、現役引退。スポーツライター、参議院議員の秘書を務めた後、国際協力機構(JICA)を経て、2007年から国連児童基金(ユニセフ)職員となる。JICAではシエラレオネ、ルワンダなどで平和構築支援に、ユニセフではスリランカ、ハイチ、フィリピン、マリ、ギリシャで教育支援に従事。2021年1月、ユニセフを休職して帰国。3月、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーに就任。6月、社団法人「SDGs in Sports」を立ち上げ、アスリートやスポーツ関係者の勉強会を実施している。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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