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生理前と試合が重なった五輪 伊調馨が語った「月経と体調管理」に女子選手が学べること

540gの子宮筋腫摘出も告白、痛感した定期的な婦人科受診の大切さ

 また、生理が試合に与える影響について質問をすると、「リオ五輪では月経前と試合日が重なってしまった」とのこと。体重が増えてベスト体重を上回り、体のキレも悪い。そのためエネルギーが必要なのに、ご飯を食べる量は減らさないといけない。「すべてが悪循環だった」と振り返ります。

 世界のトップクラスの試合では、ほんの少しのコンディションの違いも試合に影響します。それでも金メダルを決めた伊調さん。これはもう、さすがとしか言えません。

 大事な試合と生理が重なりそうな場合、今では、低用量ピルを使いながら、生理の時期をずらすという対策も可能です。もちろん、ドーピング禁止薬物も含まれないので、試合にかかる時期に服用しても大丈夫。痛みが強い場合や明らかにパフォーマンスが低下してしまうような症状がある場合は、婦人科の医師に相談するのも有効な対策です。

 さて、この対談の際、伊調さんは子宮筋腫摘出の手術をされたことを、公の場で初めて、お話ししてくださいました。

 東京五輪出場に向けて始動した頃、以前からあった筋腫が急に大きくなった、とのこと。月経時の出血の量も増え、初めて貧血にもなったため、筋腫がこれ以上大きくならないよう、低用量ピルで生理を止めて、五輪代表を決定する大会まで乗り切ったそうです。

 そして大会後、2020年に筋腫を摘出。筋腫の大きさが540gもあったと聞き、本当に驚きました。「もっと早くに対応していれば、こんなに大きくならなかっただろうし、あと540g余計にご飯を食べられたと思うと悔しい」と伊調さん。笑いながら振り返っていましたが、定期的に婦人科を受診することの大切さを痛感したそうです。

 婦人科は中学・高校生はもちろん、大学生でも、「行きにくい」と感じる人は少なくありません。また、何となく体調が気になっても「部活を休みにくい」という理由で、なかなか診察を受けに行かない学生もいます。でも時間が経つほど伊調さんのように筋腫が大きくなってしまった、とか、隠れていた病気が進行してしまった、ということも起こりえます。

 対談で、「月経やコンディションに向き合い切れていなかった」と話していた伊調さん。とはいえ、急に月経周期に伴うコンディションの変化について質問しても、生理前、生理期間の体の状態を、明確に答えていました。これがトップアスリートの感覚です。

 一方、特に学生のアスリートたちは、最後の生理はいつだったか、今は生理のサイクルでいうとどの時期かということを把握しないまま、「何か調子が悪いな?」と過ごしている選手が多いと感じています。

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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