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女子部活に消えない過度な短髪 「角刈り強制」に涙したバドミントン選手の経験と助言

「角刈り」を強制された高校時代の花田さん、伸びるたびに髪を切っていたという【写真:本人提供】
「角刈り」を強制された高校時代の花田さん、伸びるたびに髪を切っていたという【写真:本人提供】

見知らぬ男子に「きもっ」と言われた高校時代、失った自己肯定感

「女を捨てる覚悟」で挑んだ花田さんは高校の部活3年間を完走。その努力が結果として実りさえすれば、どんな苦労も美談にできるはずだった。

 しかし、元日以外の364日練習をこなし、朝練から夜9~10時までシャトルを打つ過酷な日々を過ごしても、レギュラーには定着できず。同期はダブルスで日本一を達成するなど活躍したものの、不完全燃焼に終わった。その過程で人格に与えた影響も少なくなかった。

「自己肯定感を持てなくなっていました。自分は何をやってもダメだ、努力をしても報われないと思うような人間になっていたんです」

 オシャレに関しては卒業後にできるし、学校、部活で禁止されていなければ、恋愛をしても構わない。ただ、特に禁止されていなかった花田さんは過度な頭髪規制を強いられた代償として、ほろ苦い経験を明かす。

「中学生の時にお付き合いしていた1年先輩の彼がいました。でも、高校は下宿生活で遠距離恋愛のようになるのでお別れしたのですが、髪を切った自分に自信がなくて、3年間ずっと『ヨリを戻したい』と言ってくれていたのに、この姿が見せられなかったんです(笑)。

 彼は当時、『今、付き合ってほしいと言ってくれる子がいる』と報告をしてくれて『付き合うなら結婚したいと思っている』とも言っていたのですが、それでも会うことができず。実際に、彼はその子と結婚したんです。当時はまだ若かったので、未練がありました」

 当時はニキビ顔がコンプレックスで、長身175センチでしかも角刈り。見知らぬ男子高生とすら違いざまに「きもっ」と言われたこともある。それらの経験で「自分も見た目で行動は変わるし、人も見た目で判断するんだと感じました」と言う。

 何かを犠牲にして日本一を目指すことを尊いとする風潮は日本のスポーツ界には昔から根付いている。指導者からすれば、多感な10代に競技以外に興味を持ち、才能を伸ばせなくなるリスクは男女問わず避けたい。だから“不確定要素”を減らすために規則で縛る、という論理が成り立つ。

「私自身も富山県に当時、強い中学生がいたのですが、高校は自由な雰囲気の学校に行ってオシャレを始めて最後は辞めてしまいました。監督からすると、選手がそうなると怖いから縛りたい。その手段の一つとして髪形がある。特に、女子の部活はより指導者に依存しがち。しかも男性指導者が多く、決断が一人に集中している。それで主導権が握られる構図になっていると感じます」

花田さんが自身のサイト「Precious one」の言葉に込めた想いとは【写真:松橋晶子】
花田さんが自身のサイト「Precious one」の言葉に込めた想いとは【写真:松橋晶子】

 だからこそ、指導者に「言葉かけ」に心を配ってほしいという。“女性らしさ”を捨てて、逃げ道をなくし、追い込んだ状態。だからこそ、花田さんのように努力をしても結果がついてこなかった場合、自分の存在価値まで否定してしまうリスクがある。

「『あなたのことをちゃんと見てるよ』と分かるように伝えてほしい。私はモデル時代に『あなたはモデル失格』と言われたことをきっかけに摂食障害になったことがありました。自分のすべてをかけてやっていこうと覚悟を持っているから『失格』という言葉が『人間失格』と言われた気がして。

 同じように強豪校であれば、人生をかけてやっている子は多いと思います。特に将来トップ選手を目指しているような子。そういう言葉は指導者が思う以上に女の子の心に影響を与えるものだと思うので、感情任せに子供を否定するような発言をすることは注意してほしいと、私も感じています」

 今、花田さんが自身の公式サイトに冠している「Precious one(プレシャス・ワン)」は日本語にすれば「かけがえのないもの」になる。自分が青春時代にした体験から、そうしたスポーツをする女性たちの存在価値を広めることが理念にある。

「私も自分を否定していた時期があり、『競技の結果=自分の価値』になりがちでした。結果が最重要ではありますが、それと自分の価値はつなげなくていい。結果が出せないと自分の存在さえも否定してしまうので。それぞれが、かけがえのない存在であることを伝えていきたいです」

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