世界しか見えないサニブラウン 9秒台が“当たり前”の米国で得た、最強のメンタル術
勝者のメンタリティーが生きた決勝「脚がちぎれても走る」
昨季世界最高の9秒76を叩き出したT・ブロメル(米国)とも切磋琢磨。世界で学んだ気持ちづくりは決勝でも生きた。レースまでに頭に描いたのは「脚がちぎれても走る」だった。決勝直前は舌なめずり。順番に名前がコールされ、自分の番が回ってきてもカメラに目もくれず、レーンだけを見つめていた。周りは眼中にないようだった。
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3年前の優勝は9秒台を出した直後の大会。誰よりも勢いがあり「怖いものがなかった」と振り返る。「歩くだけで神経痛があった」と昨年は腰椎ヘルニアに苦しみ、東京五輪は100メートルの出場権を得られず。200メートルのみ出場したが、21秒41で予選敗退した。9秒台を出した自分と今を比べ、進化した部分を問われたが、「10秒00台と9秒台の感覚はあまり変わらない。真の壁は9秒90」と言い切った。
「80台は出している選手の数が全然違う。周りを見ても練習から違うし、それがこういう場所で差が出る。プロに転向して浮き沈みがあって、いろんな経験でつくり上げていくことが大事。こうやって要所で結果が出すのもプロの使命。ここまでもの凄く長かったけど、ここで終わりじゃない。いっぱい経験をして成長して、過去の自分より強い選手になりたい。アメリカに帰って強い自分を取り戻したい」
プロ転向後は多くの支えを受けてきた。しかし、「それが増えて甘えることがある」と痛感。厳しい環境でさらに自分を律し、「泥臭い部分が大事」と常に成長を目指してきた。7月の世界陸上。目標は過去2度出した9秒台をもう一度マークすることではない。「昔に戻っちゃいけない。先に進まないと」。9秒台が“当たり前”の世界で研鑽する日々。山縣亮太の日本記録9秒95はもちろん、その先のとてつもないレベルを狙っている。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)