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スポーツで伸びる人・伸びない人の差 17歳で日本一、卓球・水谷隼の考えは「負けた後の行動」

「エールキャラバン2022」で済美高の生徒に特別授業を行った水谷さん【写真:荒川祐史】
「エールキャラバン2022」で済美高の生徒に特別授業を行った水谷さん【写真:荒川祐史】

負けた日の行動、水谷さんの場合は「極力、寝る」

 負けた日のメンタルコントロールは難しい。

 当日はどう気持ちを切り替えればいいのか。水谷さんの場合は「極力、寝る」という。「寝ると気持ちが少しだけでも切り替わる。大きな大会で大逆転負けをしようものなら、心の傷として残る。それをいかに治すかといえば寝るしかない。時間が解決してくれると思って」と語る。

 もちろん、目を閉じれば試合がフラッシュバックすることもある。

「だから、なかなか寝られないですね(笑)。でも、二度とこういう想いしないために『次は絶対勝つぞ』という気持ちになるし、夜にベッドに入ると冷静に分析ができるんです。帰りのバスだったり、みんなでごはんを食べていたりすると、その時はまだつらい。だけど、ホテルの部屋で寝る時に落ち着いて『あの時、こうしたから負けたんだ』と反省できる。もちろん、何日かは引きずってしまうけど、引きずったとしてもその後に『次こそは絶対勝つ』『あの想いをしたくない』と気持ちが湧いてくる時は強くなっている証し。それだけ悔しいと思うことは本気でやってきた証しでもあると思うので」

 当然、正解は一つではない。好きな音楽を聴いても気持ちを落ち着けてもいいし、一緒に戦ったチームメートと励まし合ってもいい。大切なことは、しっかりと自分自身が「負け」と向き合う時間を作ること。水谷さんの経験は、それを教えてくれる。

普及活動に力を入れている水谷さん、卓球の魅力は「1人じゃできない」と語る【写真:荒川祐史】
普及活動に力を入れている水谷さん、卓球の魅力は「1人じゃできない」と語る【写真:荒川祐史】

 7月4日、愛媛。水谷さんは大塚製薬が開催する高校生応援プロジェクト「エールキャラバン2022」でスポーツ強豪校・済美高を訪問し、特別授業を行った。その中でも、インターハイを控える卓球部などの生徒に熱い言葉を授けた。

「部活で放課後4時間練習したら、例えば自分でもう1時間イメージトレーニングをしてみる。そうした1時間の積み重ねでも継続すれば、他の選手や学校と大きな差になっていく」と成長のヒントを送り、「人生一度しかない。80年あるうちの3年くらい全力で生きてもいい。グダグダしてボーッとするのはいつでもできる。今こそやりたいことを限界まで挑戦してほしい」とメッセージを残した。

 今回、インタビューを実施したのは、この日のイベント終了後。ジュニア世代に向け、多くのアドバイスを送った水谷さんは今年2月に現役引退後、“生涯スポーツとしての卓球”の普及活動にも力を入れている。最後に、卓球という競技の魅力を教えてくれた。

「コミュニケーションツールとして凄く良いですよね。卓球は1人じゃできないし、必ず相手がいる。また、(入口が)入りやすい競技。みんな、一度は見たことがあったり、触れたりしたことがあるスポーツ。プライベートで会った時に気軽にできる競技は普通、多くない。例えば、サッカー、野球、ラグビーと考えると難しさがあるけど、卓球なら(複合アミューズメント施設の)『ラウンドワン』に行っても、今はバーに行ってもできる場所がある。

 もちろん、スポーツなので勝敗はある。すると、小学生が大人に勝ったり、逆におじいちゃんが20歳くらいの若い男性に勝ったりということが起こる。性別、年齢、体型を問わず、誰でもフェアな状態から始められるし、誰でも練習すれば勝てる可能性があるのはスポーツの中で凄く珍しい。卓球は小さな大会も含めれば、毎週のように大会があり、個人戦なので誰でも出られる。団体スポーツのように補欠がいない。凄く可能性を秘めていると思います」

 水谷さんの眼差しは次世代を担う子供たち、そして、卓球界の未来に温かく向けられている。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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