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不評続く選手村の食事の裏側 “残り物100%回収”など約束する組織委、アスリートと環境への配慮の両立に課題

選手のパフォーマンス発揮を大前提に地球環境に配慮した食事を考える必要性

 実は大会前、IOCからは「9つのテーマで1000種類のメニューを出してほしい」という要求があったそうですが、今大会では最終的に品数約半分に減らしたことになります。そうなった理由は恐らく、フード・ヴィジョンの公約に基づき、出来るだけ無駄を出さないための配慮からではないかと推測します。

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 しかし、環境によい食事と、パフォーマンスの向上につながる食事というのは、同一線上で語れる話ではありません。例えば、動物性たんぱく質のメニューが減ったことへの影響。ベジタリアンやビーガン料理では力が出ない、口に合わないという選手もいると思います。

 安全かつ美味しく、栄養に配慮した食事を用意することは基本。さらに、食文化や嗜好の異なる選手たちが集まる国際大会で、だれもが安心して食べられるものを揃えることは最低限の準備だと思います。食べ慣れたものが適切なタイミングで手に入らない状況は、不安やストレスの要因となり、体重コントロールが思うように出来ず、心身ともによいコンディションを維持することを難しくします。

 大会も後半になりましたが、SNSや各国のニュースを通して聞かれる選手村の食事に対する反応は、「必要なたんぱく源が足りない」「メニューの選択肢が少ない」「自分たちで用意したものを食べた」という声が多く、今のところ芳しくありません。

 その影響なのか、フードセクションの担当者はテレビのインタビューで、「今大会は様々な面で環境に配慮している。これをきっかけに世界中の人たちに環境のために出来ることを考え、実践してほしい」とコメントをしました。

 スポーツ界として、オリンピックという場で地球環境に配慮した食事を模索し、世界に示すことは非常に意義があります。

 しかし、スポーツの大会である以上、「環境に配慮しながらいかに選手たちがパフォーマンスを発揮できる食事を提供するか?」という姿勢は大前提であると考えます。

 現在、選手村ではアスリートたちの要望に可能な限り応える努力をしているようですが、この日のために努力を積み重ねてきたアスリートたちが全力を発揮できるよう、メニューの改善等、今できる対応に努めて欲しいと思います。そして、今大会の食事を単においしい・おいしくないで片づけるのではなく、パフォーマンスと環境の両面から食について考えるレッスンにしなければならないのだと思います。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

 ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJリーグ横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けてのスポーツ食講座なども行う。著書に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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