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戦力外通告は「負けなような気がして…」 自ら引退した元巨人・池田駿さんが超難関試験に受かるまでの“7000時間”

講師らしい軽妙な口調で、受験生時代を振り返る池田さん【写真:羽鳥慶太】
講師らしい軽妙な口調で、受験生時代を振り返る池田さん【写真:羽鳥慶太】

「ぶっ飛んだことをしていた」試合前のすき間時間も試験勉強

 セカンドキャリアは、プロの世界に足を踏み入れた時から頭のどこかにあった。中学、高校時代は数学が得意だった池田さんの脳裏に、引退後のイメージができ始めた“きっかけ”がある。

 巨人入りする前は、社会人野球のヤマハでプレーしていた。2016年のドラフト4位で指名され入団すると、サラリーマンから個人事業主になった。確定申告の必要ができ、税理士と契約して話をしていく中で気づいたことがある。

 プロ野球選手は多額の税金を払っているのに、その制度や手続きについて理解しきれていないのではと感じたのだ。「もし、自分が他の選手を助けることもできたら唯一無二だな」。1998年から4年間阪神でプレーし、公認会計士となった奥村武博さんにも選手会を通じて経験談を聞いた。その思いの下に、具体的に動き出したのが引退1年前、2021年のキャンプ中だった。

 まだ現役のうちから、異例の準備を開始した。通信講座で会計士試験の受験勉強を始めたのだ。春のキャンプでは朝、球場への出発前に30分から1時間。さらにホテルに帰ってきてからの午後や、夕食後の空き時間にもテキストを開いた。1日3~4時間は学習できたという。投手は野手と比べ、グラウンドでの練習時間が短いのも活かせた。

「元々はスマホをいじったりしていた時間だと思います。だから食事に誘われれば出ていましたし、そんなに『勉強だけ』という感じではありませんでした」

 シーズンに入っても勉強は続けた。試合前のちょっとした空き時間にもテキストを読み込んでいた。他の選手も池田さんが何をしているのか知るところとなったが、周囲の目は気にならなかった。

「ぶっ飛んだことをしているのはわかっていましたからね。応援しているという声もありましたから。野球も100%で取り組んでいましたし、勉強が気分転換という感じでした。スマホをいじったり、ゲームをするのと変わりませんよ」

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