[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

人はどこまで速く反応できるか 人知超越の0.001秒フライングでルール再考の必要性

金井にとっては、ベストを尽くしたのに失格になるという状況となった【写真:奥井隆史】
金井にとっては、ベストを尽くしたのに失格になるという状況となった【写真:奥井隆史】

ベストを尽くして失格のジレンマ「陸上競技がおかしくなる」

 金井にとっては、陸上を始めた小学3年から23歳の今日に至るまでに培った技術が否定された。ベストを尽くしたのに、失格になるという状況。今回の結果が与える影響について、苅部監督は「今回のことで怖くて出られない、みたいなことも言っている。じゃあ遅く出るのかというと、そういうわけにもいかない。いろんなところに影響しそう。私も、本人も納得してないわけではないけど、じゃあどうしたらいいのか…。同じ感覚で出てもまたそう(失格に)なってしまう可能性もある」と分析。音を聞いて反応し、いつも通り、または今まで以上に最高のスタートを切っても、フライングになるかもしれない。失格を恐れ、克服するまでに時間がかかる選手もいるという。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 それでは、現状のルールに合わせるなら、ピストル音に合わせてスタートするのではなく、0.1秒への最短を目指すのが最良なのか。苅部監督は「0.1に合わすのは難しい。できるだけ速く反応すると、0.1はかかるでしょうという根拠ですから。音を聞いて、聴覚野に入って、運動野から指令が出て、それで体が動く」と否定した。あくまでベストを目指し続けるしかない。

 自身も400メートル障害の元日本記録保持者。ベストを尽くしても失格になってしまうジレンマを知る。「だから、すごく可哀そうなんですよね。でも、『遅く出る必要はないよ』って話はしたんですよ。彼は絶対に悪くないし、『また同じように出ればいいよ』って話はしましたね。でも、これでみんなわざと遅く出るようになると、陸上競技がおかしくなる。0.1秒以内で反応できる時代なのかもしれない。『0.1』を考え直す何かいいきっかけになったら」

 今大会の男子110メートル障害では、決勝で高山峻野(ゼンリン)と泉谷駿介(順大)が13秒36(向かい風0.6メートル)で並んだ。記録に残らない1000分の1秒の計時で勝敗を決め、0.002秒差で高山が優勝。世陸代表に内定した。金井を含め、3人が日本記録に並ぶ異例の接戦。0.001秒の差で人生が大きく変わっていく。

 金井の記した言葉には「反応」という2文字がある。これまで培ってきたものへの自信、プライドもあるだろう。極限まで集中力を高め、まばたきよりも短い時間を争う世界。現状では従うしかないが、本格的にルールを再考する時代が来ているのではないか。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集