ドーピング検査の“過ち”で出場停止 事実無根の中傷、DMは暴言の嵐に…耐えた空白の1年5か月「自分を信じていた」――カナク・ジャ

目にする事実無根の批判…それでも卓球を続けられた理由とは
自らの過ちとはいえ、22歳にとって1年5か月はあまりにも長すぎる期間。当時は最高19位にまで上り詰めた世界ランキングも圏外に。それでも選手生命を諦めることはなかった。
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「このような困難に直面した選手はそれほど多くないと思うけど、僕は自分自身に大きな自信を持っている。自分の人間としての強さも理解しているんだ」
最初の1年3か月はトレーニングにも制限がかけられ、出場停止処分が残り2か月を切るまで、まともに練習することも出来なかった。だが、そんな環境をプラスに転換。15歳で親元を離れ、卓球留学でヨーロッパに移住したジャにとって、家族と過ごすことが出来たこの期間は“怪我の功名”だった。
「休むことが出来たのはむしろ良かったかもしれない。家族と一緒に過ごすことが出来た。普段は年に数週間しか会えないからね。最終的にはオフの時間を楽しめたし、精神的にリフレッシュできたよ」
試合に出場できない苦しみだけではない。事実無根の誹謗中傷にも襲われた。インスタグラムのDM欄に寄せられる暴言の嵐……。それでも「粘り強く、自分を信じ、前向きでいることが大切だ」と考え、下を向くことはなかったという。
「ネガティブな気持ちに陥るのは簡単。悪口を言う人や信じてくれない人も必ずいるんだ。だからこそ、自分を信じること。周りに良いサポートがあることがとても重要なんだ。卓球は個人競技だけど、優れた選手になるにはチームワークが不可欠なんだ」
1年5か月が経過した2024年3月。復帰して最初に出場した2つの大会で優勝すると、翌4月に行われた「WTTフィーダー・デュッセルドルフ」でも日本の篠塚大登(愛工大)や安宰賢(韓国)など並みいる強豪選手を次々と破り、優勝を果たした。
「復帰した時はエネルギーに満ち溢れていて、自分にもできるんだってことを本当に証明したかったんだ」
雌伏の時を経てカムバックを果たしたジャ。世界ランキングは31位にまで上昇し、今大会も準決勝進出の躍進を見せた。苦しい“空白の時間”を耐えきった男はさらに逞しくなって帰ってきた。
(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)
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